国内

トヨタ役員輸入の薬物 米で社会問題化の乱用実態とその効果

 トヨタ自動車初の女性役員で米国籍のジュリー・ハンプ容疑者(55)が6月18日に麻薬輸入で逮捕された。

 ハンプ容疑者宛ての小包からは、麻薬成分オキシコドンを含む錠剤57錠が発見されたが、オキシコドンはモルヒネなどと同じオピオイド系鎮痛剤の一種で、アヘンに含まれる「テバイン」を合成して作られる医療用麻薬だ。

 日本では『オキシコンチン錠』『オキノーム散』、注射剤の『オキファスト』(いずれもシオノギ製薬)が承認され、主に進行がん患者の疼痛緩和に使われている。『死ぬまでに決断しておきたいこと20』などの著書がある東邦大学医療センター大森病院・緩和ケアセンター長の大津秀一氏の解説。

「身体が痛みの刺激を受けると、脊髄の後角という部位を経由して脳に伝えられ、人は“痛い”という感覚を得ます。オキシコドンはその脊髄後角や、脊髄後角と脳をつなぐ回路に作用して痛みを抑えます。

 患者に腎機能障害がある場合は代謝物が蓄積して眠気などが出るモルヒネと違い、使いやすいのが利点です」

 痛みがある患者に医療用として投与すれば精神依存を起こさないが、健康な人が服用すると問題が起きる。

「痛みがない人がオキシコドンを使用するとドーパミン放出が増え、脳の側坐核という部位に作用して、ボーッとするような心地よい感覚になります。精神依存や耐性を形成し、やめられなくなったり、もっと欲しくなったりする依存性が現われます」(同前)

 覚醒剤のように刺激に敏感になるのではなく、ぼんやりするため、リラックスするために乱用されることが多い。

 アメリカではオキシコドンをはじめとする鎮痛剤の乱用が社会問題化している。米国立薬物乱用研究所は、12歳以上の米国人1600万人が過去1年間に医療目的以外で使用したと推計している。

 飲み薬として服用するほか、錠剤を砕いて鼻から吸い込むなどの方法で乱用されているため、現在では粉砕できないようゲル状の薬剤に変更されている商品も多い。

※週刊ポスト2015年7月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン