高須:もちろん、まだまだ大丈夫だよ。麻雀といえば、普段はちょっとボケちゃってるような人でも、麻雀になったら急に強くなるお年寄りもいるよね。ナメてかかってたら、ボロ負けしちゃう(笑い)。そういう意味では、麻雀なんかは認知症対策にいいんだろうね。
認知症っていきなり全部の機能が壊れていくわけではなくて、いろいろな機能がまだらに壊れていくんだよ。記憶力だけがダメになったり、計算だけができなくなったり、っていう感じでね。だから、大丈夫なところはしっかり使って、それ以外の部分を周りの人に補ってもらいながら、認知症が進まないようにするというやり方も重要だろうね。
それこそ、昔の日本の社会なら、認知症気味になっても、周りの人が上手にサポートしながら、お年寄りを敬いつつ、社会に溶け込ませていく文化があったんだよ。お年寄りがちょっとおかしなことを言っても、「さすが! すごいですね!」っておだてたりしてね。
あとは、昔ならおじいちゃんおばあちゃんが、孫の面倒を見ていたけど、それも認知症対策になってたんだよ。認知症になると子供に戻っちゃう部分もあるんだけど、孫と一緒に過ごせばそんなにおかしなことにはならずに済む。でも、最近はおじいちゃんおばあちゃんが孫と一緒に過ごすこともなくなって、それで認知症が社会に溶け込めなくなっちゃう。
──認知症患者と社会とのつながりが希薄になっているのも、問題のひとつなんですね。
高須:そもそも人間は多かれ少なかれ、みんな認知症になっていくんだから、認知症患者が生活できる社会というのは当たり前のものなんだけどね。逆に言えば、社会生活ができなくなった時点で、その人が認知症だと気づくパターンが多すぎるのかも。
健康診断で認知症検査を受けても毎回同じ質問で、簡単に満点が出せるから、まったく意味がない。検査で大丈夫だからといっても、誰でも少しずつ認知症になっているんだよ。「気づいたら認知症だった」ということではなく、「誰でも認知症になるんだ」って思いながら年老いていけば、もうちょっと過ごしやすい高齢化社会になりそうだけどね。
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かつての日本のように、認知症のお年寄りが自然に溶け込めるような社会を作ることが重要だという高須院長。ますます高齢化が進むに連れて、医療の現場だけでなく、家庭での認知症対策こそが求められるのかもしれない。
【プロフィール】
高須克弥(たかすかつや):1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。
昭和大学医学部形成外科学客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広い。金色有功章、紺綬褒章を受章。著書に『バカにつける薬 ドクター高須の抱腹絶倒・健康術』(新潮OH!文庫)、『私、美人化計画』(祥伝社)、『シミ・しわ・たるみを自分で直す本』(KKベストセラーズ)、『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)など。最新刊は『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)。