“レギュラーではなかったけど”軽やかに街を駆け抜けるタケシ
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森下健司(モリシタタケシ)49歳
建設会社営業三課 課長
会社では人望厚く、「たよれる兄貴分」で通っているが、後輩のトラブルも背負いこむことが多いためか、出世街道からは少しはずれて課長は8年目。
学生時代の野球部ではレギュラーではなかったけど、みんなの盛り上げ役だった。3つ上の先輩たちは甲子園におしいところまでいったので、マネジャーも多く入部し、期待された代だったが、結果地区大会初戦敗退だった。
結婚3年目にできた長女(ミユキ)は中学3年。部活やアイドルに夢中で、最近は長男のハルトぐらいしか相手にしてくれないのが、ちょっとさみしい。
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キャッチボールや夜の街を駆け抜けていた時のフォームには、“レギュラーではなかったけど、みんなの盛り上げ役だった”部活の経験があったのだなぁ――と、若き日のタケシの姿を想像。トイレにこもっている時の表情に、“今は相手をしてくれない、長女・ミユキへのさみしい気持ち。ハルトもいつか、そうなってしまうのだろうか?”といった不安な感情――など、わずか秒数のシーンだけなのに、タケシという人物がリアルな存在感を持ってくる。
こうした興味を掻き立て、自分自身や身近な人と“どこか似ている”と思わせることができるのは、やはり“大人の実力派俳優”の演技力があってこそだ。
また、近年のCMトレンドの傾向をもうひとつ挙げておくと、メインキャラクターを固定した長期シリーズ――ソフトバンク「白戸家」の8年、サントリー缶コーヒー『BOSS』の「宇宙人ジョーンズ」の9年といった怪物クラス。同じく“大人の実力派俳優”の松重豊が出演する、味の素「Cook Do きょうの大皿」は2年ほどだが、かなりのバリエーションがOAされている。
同CMシリーズの場合も、紹介したプロフィールの行間から、タケシの物語が続いた時に出てきそうなシーンが思い浮かぶ。今後については不明だが、プライベートで幸せな田中が、CMの中のタケシとしても、健康で幸せに暮らす姿を見せてくれるのか? ドラマの続きを楽しむ気分で、期待したい。