それでも断わり続けると、女性はほとんど口を開かなくなり、居心地が悪くなってきた。全く楽しめなかったので、30分が過ぎた頃、会計をお願いした。すると──。
店長を名乗る男性が持ってきたのは、何と15万円超の会計伝票だった。明細には〈入会金10万円〉とある。もちろん「聞いてないぞ!」と抵抗したが、店長は「入店時に伝えている。録音もある」という。
彼がポケットから取り出したICレコーダーには、記者が入店し店員に案内される音声の中に、「入会金はお一人10万円になります」という店員の声が確かに入っていた。まったく聞き覚えがないので、記者に聞こえないようにICレコーダーに吹き込んだのだろう。
「条例では事前に料金を提示しなければならない」と指摘すると、「お客様の目の前にあるじゃないですか」とメニュー表を指さした。黒革の厚いそのメニュー表は強力な磁石で貼りつけられた二枚式で、開くと入会金と、消費税を含めると48%(!)にもなる各種チャージ料が書かれていた。
だが、払うわけにはいかない。「これは詐欺だ」と記者が主張すると、奥のバックヤードに来るよう促された。店長は態度を変え、記者の携帯電話を奪い、免許証の住所をメモすると、こうまくし立てたのである。
「お前が払わなければ親族に払ってもらう。実家まで取り立てるぞ、ゴルァ!」
もう限界だった。入店から2時間が経過した頃、「本当にカネがない」と懇願すると、チャージ料だけ値引きしてくれた。結局11万円ほどを支払って解放された。
店を出る頃、店内に客は一人もいなかった。
※週刊ポスト2015年7月31日号