ビジネス

東芝 中小なら「粉飾」扱いなのに不適切会計と報じる理由は

 東芝が2008年4月から2014年12月までの間、経営トップの関与のもと組織ぐるみで総額1518億円の利益を水増ししていた実態が21日の第三者委員会の報告書で明らかになった。一連の経理操作は社内の経理ミスで片付けられる「不適切会計」ではない。

 だが、大手紙やテレビは「不適切会計」という表現に固執している。そこには大企業には甘い日本の経済界を取り巻く“風土”がある。

 もし東芝の時価総額が小さく従業員1000人程度の企業だったならば、上場廃止は当然議論されるだろう。54億円の虚偽記載による粉飾事件で、2006年にライブドアは上場廃止になった。だが、騒動前の時価総額が2兆円ともいわれた大企業ゆえに東芝は上場廃止を免れる可能性が高い。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏はこう指摘する。

「東芝の上場廃止が市場に与える影響は大きく、せっかく上向きかけた株高ムードに冷や水を浴びせることになるため、上場を審査する東証は完全に腰が引けている。粉飾発覚直後から東芝の要望を聞き入れて、有価証券報告書の提出期限を8月末まで延長することを早々と決めた。本来ならば上場廃止を視野に入れてすぐに東芝株を『監理ポスト』に入れるべき。なんとか上場廃止しないようにという思惑が透けて見える」

 前述した大手メディアの報道姿勢についても、須田氏は批判する。

「中小企業なら最初から『粉飾決算』と報じていますよ。しかし東芝は各テレビ局の大スポンサー。大メディアは言葉を選んでいる。新聞も経団連の主要企業である東芝を厳しく書けば今後の取材がしづらくなる懸念があるのでしょう」

 中小企業であれば、虚偽記載が発覚すれば株式市場からは“一発退場”だ。

※週刊ポスト2015年8月7日号

関連キーワード

トピックス

中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト