国内

新国立の暑さ対策にかち割り氷? 甲子園の先達が挙げる課題

五輪猛暑対策にかち割り氷(写真提供・阪神甲子園球場)

 建設費問題で揺れる新国立競技場問題の暑さ対策で「かち割り氷」案が浮上した。実現可能性があるのか、そもそも「かち割り」とはどうやって作られるのか。関係者に取材した。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 新国立競技場に「かち割り氷」のアイデアを出したのは、なんと安倍晋三首相だ。

《8月27日、遠藤氏が首相に説明するため官邸を訪れた際、携えた資料にあった建設費は「1640億円」。競技場には、客席の下から冷風が吹き出す冷房の設置を検討しており、これを外せば、さらに100億円のカットが見込めた》

《「暑さ対策なら、『かち割り氷』だってある」。首相は夏の甲子園名物を挙げ、遠藤氏に冷房施設の断念を指示。「首相主導の政治決着」を演出し、1500億円台の「大台」を達成した》(朝日新聞8月29日記事)

「かち割り氷」とは主に夏の高校野球シーズンに阪神甲子園球場で販売されている名物だ。ビニールの袋に氷が詰められ、ストローとともに提供されて、1袋に氷が約350グラム、200円である。

 新国立競技場の収容人数は6万人超。それだけの世界中から集まる観客が、小さなビニール袋にストローを指してチューチューやっている姿は、実際にどれくらい暑さ対策になるのか不明だが、愉快な光景ではないか。

「安倍さんの『かち割り』発言は新聞で知りました。いやあ、日本の偉い人まで『かち割り』が浸透してて、有り難いですわ。たぶん甲子園に来たことないやろうけど」

 と笑うのは、甲子園球場で「かち割り氷」の製造・販売を一手に担う梶本商店の梶本泰士さん。

「かち割り氷」はそもそも、1927年に梶本さんの先代が甲子園でかき氷を販売したことに始まる。1957年に金魚すくいの袋を見て、現在のスタイルを思いついた。

 最盛期には1日1万5000個を売ったこともあるが、氷らせた清涼飲料水の台頭などもあり、現在の販売個数などは「秘密」。それでも灼熱のアルプススタンドなどでは、買い求めた「かち割り氷」を額に乗せたり、涼を楽しむ人が多い。

「氷ってるときはおでことか首筋に当てて身体を冷やして、溶け出したら昔は粉末ジュース入れて飲んでる人が多かった。いろいろ楽しめるのがかち割りですわ」(梶本さん)

 ただの氷をビニール袋に詰めたと思うなかれ。氷の製造方法は一手間掛けられている。水道水をまず浄化して不純物を取り除き、大きな氷塊にする。それをすぐ割らずに、いったん「氷室」に48時間寝かせるという。

「寝かせることで氷の芯まで凍って、溶けにくくなるんです。甲子園やったら1試合以上は持つでしょう。ただ家庭用の冷蔵庫で作った氷をもって来ただけではそんなに持ちません」(梶本さん)

 さすが灼熱の甲子園球場に出場するだけはある、氷も鍛えられているのだ。

 しかしそんなに手間がかかるのなら、実際に新国立競技場で提供するのは無理なんでは……。

「いや、氷は工場さえあれば作れます。難しいのは売る人の確保やね」

 梶本さん、意外な理由を挙げた。

「かち割り売りは、声を出さんと売れませんから」

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」の会長である永谷晶久さん
《都道府県魅力度ランキングで最下位の悲報!》「埼玉には『うどん』がある」「埼玉のうどんの最大の魅力は、多様性」と“埼玉を日本一の「うどん県」にする会”の会長が断言
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン