「この一連の流れの中では、白鵬が力をつけて番付を駆け上っていた。金親が師匠として部屋を切り盛りしていた時に白鵬は横綱まで上り詰めています。
が、白鵬の“育ての親”はあくまで竹葉山。入門前、体が細くて大成しないといわれていた白鵬を根気強く育てたのが竹葉山でしたからね。だから白鵬は金親のいうことをあまり聞かなかったというし、この3者の微妙な関係が、宮城野部屋にはずっと横たわっていた」(同前)
それを踏まえて、角界では様々な憶測が流れている。伊勢ヶ濱一門のある関係者が語る。
「なんだか都合良く金親、そして先代との関係を清算できたんだなァというのが正直な感想です(苦笑)。これまで部屋の建物は9代目の未亡人の持ち物で、竹葉山が借りていてチーママのような形で運営していた。
だが実は、宮城野部屋は耐震性の問題から移転することが8月末に発表されたばかり。中には“部屋関係者の誰かが逮捕情報を事前に知っていて、このタイミングで移転を計画したのではないか”とまでいう人もいますよ」
宮城野部屋では8月30日に白鵬の最後の「綱打ち」が行なわれ、その時に全員での記念写真が撮影された。しかしそこに部屋付親方である金親の姿はなかった。前出の相撲ジャーナリストは別の見方をする。
「金親のバックが北の湖理事長である、というのが意味深です。近年、モンゴル人のまま親方になりたい白鵬と、国籍を盾にそれを絶対に認めようとしない理事長の確執は決定的なものとなり、両者の対立関係が強まっていました。
ただ北の湖理事長には最近『重病説』が囁かれ、角界における影響力の低下を指摘する声も少なくない。先の名古屋場所も病気療養のため途中休場。さらに天皇賜杯は代理が授与するという、過去の理事長では誰もやったことのない失態を演じてしまった。
こうしたタイミングで、白鵬の近くにいた北の湖理事長の“秘蔵っ子”が逮捕された。被害者男性に被害届を出すよう焚きつけた者がいるのでは、との噂も飛び交っています」
突然の現役親方の逮捕劇は単なる偶然か、それとも何者かが刺したのか。大きな波乱を含んだまま、角界は9月場所を迎える。
※週刊ポスト2015年9月18日号