ライフ

日光 開山の祖・勝道上人が見出した神域としての原風景を辿る

日光の華厳の滝と中禅寺湖

 秋の観光シーズン到来で多くの人で賑わう栃木県・日光。東照宮では祭神である徳川家康没後400年を迎え、式年大祭などが開催されているが、そもそも日光はなぜ神域といわれ、家康はこの地に自らの霊を祀ることを指示したのだろうか。そのヒントを探るべく、日光開山の祖である勝道上人(しょうどうしょうにん)が歩いた道を、写真家・小澤忠恭氏が辿った。

 * * *
 古より多くの人が訪れる栃木県の観光地・日光。江戸初期に徳川家康の霊を祀る東照宮が建てられて以来、大名、武士は無論、庶民の間でも日光詣では盛んに行なわれてきた。現代でも中禅寺湖や華厳の滝といった景勝地にも恵まれ、年間1000万人以上の観光客が訪れる。1999年には世界遺産に「日光の社寺」として登録され、海外からのツーリストも増えた。

 観光客は急ぎ足で世界遺産3社寺(東照宮、二荒山神社、輪王寺)を巡り名物を食べ、さっさと立ち去っていくように見える。もちろん世界遺産は見応えのあるものだが、実はそれ以外の場所にも日光が本来持っている不思議な「吸引力」が隠されている。東照宮は素晴らしいが、それではなぜ家康は日光を選んだのかと考えると、家康が見た東照宮以前の日光を探してみたくなる。

 日光を仏道修行の場として開山したのは、南栃木真岡の人・勝道上人といわれている。西暦766年(奈良時代)、 勝道上人は神橋辺りで大谷川を渡り、そこを修行の地とした。勝道が最初に庵を結んだのは神橋の北岸付近で、四本龍寺を建立した。後にそのすぐ南、本宮神社のある場所で二荒山(ふたらさん・現在の男体山)の神を祀り、ここが日光信仰の中心地になる。この二荒をニコウと読んだことから、日光という地名が生まれたとされる。

 だが、ここまで足を運ぶ観光客はほとんどいない。草木の生い茂る四本龍寺付近に立つと、凛とした気配と静けさに向き合うことができる。素朴で身の引き締まる空間だ。東照宮以降に造られた豪奢さというベールの、そして現代の観光という経済のベールの届かない所に、勝道が見た聖地・日光がある。

関連キーワード

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン