国際情報

大暴落の瞬間に「アアーッ!」 中国の証券会社で投資家絶叫

 中国語では、株券のことを「股票」(グービャオ)と呼ぶ。1億人以上とも言われる、株取引する個人投資家は「股民」(グーミン)と称される。そんな彼らが集まるのは、街角にある証券会社だ。覗いてみると、異様な光景が繰り広げられていた。在中国ジャーナリストの西谷格氏がリポートする。

 * * *
 中国の株式市場は、まさに賭場だ。7月22日には、中国の投資家の間で有名な36歳の敏腕ファンドマネージャー、劉強氏がホテル最上階から飛び降り自殺。直近の大暴落で6億円ほどの負債を抱えていたとされる。また、中国メディアでは「749万元(約1億5000万円)あった財産が、7月8日の暴落により、わずか1日で80万元(約1600万円)になった」という個人投資家の嘆きが紹介された。

 だが、悲劇に見舞われたのはこうした富裕層だけではない。中国では、余剰資金で投資しようというのではなく、庶民が生活資金や借金を元手に一攫千金を狙う色彩が濃いからだ。それは証券会社の株価ボードコーナーに行くとよくわかる。

 上海の中心部、人民広場近くにある老舗の証券会社・申銀万国証券を訪れると、ロビーの椅子は60~70代の中高年の投資家たちでごった返していた。

 数秒ごとに数字が変わる株価ボードを眺めながら、ナイフ持参でリンゴの皮をくるくると剥いてかじる女性、半透明のタッパーを出して焼きそばを頬張る女性、どこからか45Cm四方ほどのベニヤ板を持ってきて椅子の上に置き、トランプの「大貧民」に興じている集団いずれもごくごく一般的な庶民に見える。

 彼らは思い思いに雑談しているが、目だけは真剣だ。この日、13時40分頃、上海株式指数が急落した。その様子がモニターにチャートで映されると、それまで黙っていた中年の女性が突然金切り声をあげた。

「アアーーーッ!」

 株価の上下に神経質になっているのだろう、「急落しましたね」と声をかけてもこちらを一瞥するのみだった。

 証券会社の近くでは、株談義をしたい人たちが集まる“野外投資家サロン”が自然発生的にできる。行くと200人くらいの人々が、あちこちで議論を繰り広げていた。

「○○社はいまが買いだ」
「俺は儲かった金でマンション7部屋買った」
「儲かったら車を買うんだ」

 まるで競馬場で繰り広げられている会話のようだ。脇には「1枚1元」で株価予想の紙を売っている“予想屋”までいる。ほとんど博打のような感覚で株投資している人が多いことが見えてくる。

文/西谷格(在中国ジャーナリスト)

※SAPIO2015年10月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン