いっぽうの投手成績はどうか。迷いますが、被本塁打、与死球、失点の3項目で見てみました。こちらも9月10日現在の記録です。規定投球回以上に達しているセパの投手の中で、被本塁打が多いトップ3は、十亀剣(西)18本、小川泰弘(ヤ)と中田賢一(ソ)16本。与死球は、藤浪晋太郎(神)11個、牧田和久(西)10個、中田賢一(ソ)と吉川光夫(日)が9個となっています。失点は、涌井秀章(ロ)66点、則本昴大(楽)と藤浪晋太郎が64点。この項目は60点以上に9人が名を連ねる激戦です。
こちらも2014年の最終記録も合わせて考えると、被本塁打は20本、与死球は10個、失点は80点を越えたら、かなり立派なものと言えそうです。すでにふたつの項目をクリアしている中田賢一(ソ)は、失点が53点。あと27点で「逆トリプル」の達成です。藤浪晋太郎(神)は、被本塁打が7本というのがネック。ソフトバンクファンは中田がそこそこ失点しつつも勝ちを拾い、阪神ファンは藤浪が本塁打を打たれながらもどうにか乗り切るという展開を期待しつつ観戦すると、さらに楽しめるでしょう。
言うまでもありませんが、こうした一見マイナスの記録に着目したのは、けっして笑ったりバカにしたりするためではありません。三振にせよ併殺打にせよ失策にせよ、あるいは被本塁打にせよ与四球にせよ失点にせよ、リスクを恐れず真っ向から勝負しているからこそであり、たくさん出番があって頼りにされている証です。ある意味、プロ野球選手にとっての「勲章」と言っていいでしょう。
どんな仕事においても、「逆トリプル」的な展開を怖れない気概は大切。三振を怖れて当てるバッティングばかりしている選手なんてなんの魅力もないし、そもそもバッターボックスに立つ資格はありません。時には、大振りや際どいコースを攻めることも必要です。
部下や後輩に対しても、華やかな成果やわかりやすい長所だけでなく、一見マイナスに見える結果やキャラクターにもきっちり目を向けたいところ。西武の中村や阪神の藤浪を応援することで、そんな大人の懐の深さや視野の広さを身に着けられる……かも。
ついでに、と言ってはなんですが、自分の短所についても「逆トリプル」の考え方を当てはめましょう。偏屈とか忘れっぽいとか食いしん坊とか、どんな短所も強引に解釈すれば「あえて攻めているからこそ」と思えるはず。まあ、たいていは都合のいい自己弁護ですが、それはそれで大人のたくましさです。