「留学したいができない」の理由をみると、「経済的な理由」が18.2%、「時間の余裕がない」13.3%、「語学力に自信がない」11.9%となっています。なかでも「経済的な理由」は「留学したいができない」学生を100とすると、58.9%と高い割合となっています。
就活を理由とする設問はないものの、お金の問題が大きいことは明らかです。そもそも、18歳人口の約半数が大学に行く時代です。高卒の求人の減少、産業構造の変化、社会全体の高学歴化という流れからいうと、大学に行かざるを得ない時代ともいえます。そんな中、経済的に豊かではない学生が増えていることは明らかです。だから、就活を繰り下げすれば、留学が増えるという見立て自体が間違っていたのではないかとすら思うわけです。
この、就活時期の繰り下げの目的である「学ぶ機会の確保」と「留学の推進」というのは、個人的には「パンドラの箱」を開けてしまったように思うのです。これを阻害している原因は、「就活だけ」とは言い切れないわけで。そこで、もともと大学に行けるだけの学力と経済力がない層を大学生にしてしまっているという現在の大学の根本的な問題が可視化されるからです。
これを就活に責任転嫁し、就活時期を繰り下げすると何かが解決されるかもしれないと考えた人たちは、実は現実を見ていなかったわけで、やや過激に言わせてもらうと、大学生のことなど何も考えていなかったのではないかとすら考えるわけです。
なお、「留学の推進」という大義名分に関してですが、ここに関して言うならば、いつ留学してもらうのがベストなのかという視点が抜け落ちています。千葉商科大学国際教養学部という、グローバル人材育成系の新設学部で教員をやっていますが、本学のこの学部においては留学がマストなのですね。学部を立ち上げる際に、議論を重ねたうえで至った結論は、留学してもらう時期は大学2年の秋がベストではないかということでした。
就活にかぶらないという理由もありますが、それ以上に、この時期に留学して刺激を受けると、自分が学ぶべきテーマなどのヒントにもなりますし、語学力についても危機感がわくからなのですね。帰国してから学ぶテーマがより明確になります。さらに、任意でもう1回留学することだって可能になるわけです。
一貫して批判していることですが、就活に関する議論は、タテマエの連鎖にすぎず、現実を見ていない話になるのか、と。ポーズだけの議論に意味はありません。この問題については、どの立場の人も「ぶっちゃけ話」をすることこそが解決策につながるのではないかとすら思うわけです。はい。