国内

聴導犬拒否騒動 他者に対する不寛容な社会の空気が気になる

 大阪の百貨店内のカフェで聴導犬を連れた客が入店を拒否された。百貨店は聴導犬、盲導犬などの「補助犬」の受け入れを積極的に行っていたが、テナントのカフェに周知されていなかったのが原因だった。ネットでは大きな批判が起きたが、本当の問題はどこにあったのだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が分析する。

 * * *
 今月上旬、大阪の百貨店内のカフェで、聴導犬を連れた客の入店が拒否されたという顛末がネット上で話題になった。同百貨店で行われていた「補助犬法啓発イベント」の参加者が、イベント後に同じフロアのカフェに聴導犬とともに入ろうとしたら入店を拒否されたという。百貨店の担当者も含めた当事者にとっては信じられない出来事だったろう。数日後、百貨店の公式ホームページで「聴導犬の入店に関するお詫び」を発表するに至った。

 本来、法的には聴導犬を連れた客に対し、飲食店側の入店拒否は許されていない。2002年、身体障害者補助犬法が制定され「飲食店などの不特定多数の者が利用する施設を身体障害者が利用する場合において、身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない」と明文化されている。

 ネット上では、今回の飲食店の対応を非難する声が多い。確かに店の従業員教育は十分でなかったのだろうし、百貨店とテナントとの間でも法令に対する知見が共有できていなかったと考えられる。もちろん、店の対応を肯定するつもりは微塵もない。だが、ネット上で飛び交う「ひどい」「ありえない」といった感情的な書き込みに、無条件に肩入れする気にもなれない。

 なぜならば、すべての飲食店にとって衛生管理は最重要事項であり、たいていの店にとって補助犬への対応は非日常だからだ。さらに衛生管理のいい悪いは別として、一般的だと思われている飲食店の常識――今回のケースで言うと「(聴導犬であろうとも)動物の入店を拒否」に沿った対応となってしまう。悪いのは対応したスタッフにそうさせてしまう、仕組みのほうだ。

 実は食品衛生法には「作業場には、営業者及び従事者以外の者を立ち入らせたり、動物等を入れたりしないこと」という条項がある。立ち入らないよう規定されている「作業場」とは調理場のことで、客席への動物の連れ込みが禁止されているわけではない。では、この食品衛生法の規定は現場に、そして世の中にどこまで知られていたのだろうか。

 愛知県では2005年に『いわゆる「ドッグカフェ」に対する衛生指導要綱』が制定されていて、その序文にはこうある。

「昨今のペットブーム等により、愛がん動物が単なるペットとしてではなく、伴侶動物として人の生活により重要な役割を果たすようになってきていることもあって、客席に愛がん動物を同伴することを認める飲食店等が現れてきております」

 本来、禁じられているわけでもない行為に対して「認める飲食店等が現れてきて」と表記する。客席のペット同伴を認めるかどうかの判断は、店の裁量のはずだが、行政がバイアスをかけてしまっている。もっと言えば、自然にこういう序文になる空気が世の中に醸成されてしまっていたとも言える。

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン