「今だから話せる話ですけどね。諸々の事情から、ここで名前を挙げるとマズイと判断し、“名前は出ていませんでしたね”と否定しておきました。すると川上さんはホッと安心したような様子でした」(林氏)
本誌のインタビュー後、八百長事件は永易の記者会見以降にも次々に発覚。文字通り「黒い霧」となっていく。
永易が実名を挙げた選手の中には、西鉄から中日にトレードされていたT投手も含まれていた。本誌は第2弾記事で、当時疑惑を指摘されて蒸発していたT氏を疑わしいと実名で報道。この記事で本誌は、T氏から名誉棄損で東京地検に告訴されたが、結局、T氏は野球賭博の捜査の過程で浮上したオートレースの八百長疑惑に関与したとして球界を永久追放された。本誌も不起訴処分となった。
さらに中日のエースだったO投手は、同じくオートレースに絡んで逮捕されるという事態にまで発展している。林氏が語る。
「ある仕事で名古屋に行ったとき、Oさんがバーをやっているというので立ち寄ってみた。こちらの素性は明かさず飲んでいたんですが、カウンター越しの彼の寂しい背中を見たときは、これがとんでもない事件だったことを痛感させられました」
今回、野球賭博に関与した巨人の福田聡志投手が生まれる、はるか昔の話ではある。しかしその行為がどれだけ球界とファンを裏切り、自分自身をも貶めることなのか知るべきである。闇に手を染めてしまった永易の独占告白が伝える教訓は、今なお重い。
(文中一部敬称略)
※週刊ポスト2015年10月30日号