この9月、中村は7年ぶりとなるシングル『はじめての空』を発表した。シングルとしては、実に52枚目にあたる。東日本大震災後、初めて出すシングルを中村はこう解説する。
「老年にさしかかった人たちが頑張ってもう一度何かに挑戦しようというときに、目を閉じて開いてみると、いままでと違った世界がひらけている。空を見上げれば初めて見る空と景色。もう一回頑張ろう、頑張ればまた違った世界に行ける、というメッセージソングなんです。まあ、あんまり俺がはっきりとこの歌はこうですといわないほうがいいんだけどね。聴く人にいろんな解釈をしてもらったほうがいいと思うので」
18歳まで過ごした宮城県女川町は、先の震災で甚大な被害を受けた。中村は、すぐに地元に入り、その後、さまざまな形で復興支援を続けてきた。この9月だけで2回女川に足を運んだ。
「震災後、歌の力みたいなものを改めて感じることが多くてね。歌ってすごいものだな、と。俺の歌でも、なんらかの助けになったり影響を与えられる歌であればいいな、といつも願っているんです」
◆中村雅俊(なかむら・まさとし):1951年2月1日生まれ。1974年、文学座に入団し同年のドラマ『われら青春!』でデビュー。自身が歌う挿入歌の『ふれあい』も大ヒットとなる。俳優、歌手としての活動のみならずテレビやラジオでもマルチに活躍する。コンサートツアー「COLOR OF HEART」は12月25日まで全国で開催。7年ぶりのニューシングル(東建コーポレーションイメージソング)『はじめての空』が発売中。
取材・文■一志治夫 撮影■江森康之
※週刊ポスト2015年10月30日号