企業広告でもトヨタはスポーツシフトを強めている。これまでトヨタは、ビートたけしや木村拓哉を起用し、東北復興の願いを込めた「ReBORN」(リボーン)と題した企業CMを放映してきたが、それを引き継ぐ形で出てきたのが、トヨタのレーシング部門「ガズー・レーシング」をメインに据えたCMだ。
この7月から第一弾が始まり、レースシーンを背景に、「極限の中でしか、学べないものがある。(中略)トヨタよ、トヨタの作ったその壁を、壊せ」と、モータースポーツに賭けるトヨタの思いを訴求している。
ただ、こうした一連のモータースポーツ・シフトに、トヨタ内部からは不安の声も出ている。クルマを運転している人がみな、運転好きとは限らず、「必要だから、便利だからハンドルを握っている」だけという人も多い。「そうした人々に、運転の楽しさなど伝わるだろうか」と販売店の一部には不安の声もあるという。しかし、トヨタにとってその反発は織り込み済みだ。
「おそらくトヨタは、将来的に、クルマを単なる移動手段と考える人々には自動運転車を、クルマを走らせる喜びを求める人には自らハンドルを握る走り重視のクルマをと、2つの方向性でクルマの進化を考えているはずです」(業界紙記者)
スポーティなプリウスはそのための布石であり、これはトヨタの挑戦である。
※週刊ポスト2015年11月6日号