かつて早い時期の新馬戦といえば1200メートルなど短い距離ばかりでした。ところが短い距離だと必ずスタートから押されるので、ためる競馬ができずにゴール板を駆け抜けることになる。我慢が利かなくなる危険性があるわけです。そういうことで、クラシックを狙う馬は秋の東京あたりをデビュー戦に選んでいました。
最近では夏場に1800メートルの新馬戦があるので、クラシックを狙う馬でもデビューが早くなり、選択肢が広がりました。スタートで押されても、ためを作る場面があるので競馬に幅が生まれます。次走がぐっと楽になるんですね。
どの馬も新馬戦で問題点が顕わになる。2歳馬の気性と向き合うわけです。そこを調整していくところが難しいところです。
例を挙げますと……。2歳牡馬ペガサスバローズは厩舎期待の一頭で、7月中京での新馬戦(芝1600メートル)で3着。10月京都3Rの未勝利戦、同じ鞍上(浜中俊)で臨みました。
前走の着順から1番人気に推されましたが結果は16頭中13着。スタートは良かったものの、折り合いを欠いて徐々に後退し、いいところを見せられませんでした。実は当日、ペガサスはテンションが上がりすぎて、競馬場に行くまでにエネルギーを使い果たしていた。きちんと走れる状態ではなく、パドックではやむなく私も馬を引きました。
「調教師自らがパドックに出てくるんだから、相当に力が入ってるな」と期待票を投じてくれた方も多かったとか。しかし事実は逆で、調教師が出ていかなければどうにもならなかったし、出て行っても落ち着きを取り戻せませんでした。
そういう馬を、次にどう走らせるか。難しいけれど面白いところです。
※週刊ポスト2015年11月13日号