耳の痛い話だが、実際に肥満と高血圧は密接な関係がある。滋賀医科大学アジア疫学研究センター長の三浦克之教授らの研究グループがこの8月17日に発表した研究報告によれば、1980年の時点で、肥満(ここではBMI25以上)の人は適正体重(BMI25未満)の人に比べて、高血圧の割合が男性が1.9倍、女性が2.4倍だった。さらに2010年の同調査では男性で2.8倍、女性で3.5倍に差が広がっているという。
昔に比べて減塩や飲酒量の減少が進んだため、相対的に肥満の影響度が大きくなったと考えられている。だから、特殊な事情で高血圧の人を除けば、ダイエットで体重を減らすことが第一なのである。
降圧剤を止めるには「医師の管理下で」と述べたが、現実には降圧剤を止めることを指導する医師は少ない。65歳の男性(会社役員)は、体重を減らしたのに医者が止めさせてくれないと嘆く。
「体重が85kgのときに上が140になり、7年ほど前から近所の病院でアムロジピン錠を処方されています。今は体重が72kgに減り、上が120くらいになり、もう高血圧じゃないと思っているが、医者から『飲んでいないと10年後に大変なことになる』と脅かされて飲み続けている」
何か起きたときに責任が取れないという理由から患者に服用させ続けるのだろうが、降圧剤の乱用は別のリスクを呼び込む危険もある。
降圧剤には、薬によって筋力の低下や痙攣、めまい、動悸、頭痛などの副作用がある。こういった症状が交通事故や転倒事故を誘発する危険が指摘されている。また、血圧を下げすぎると認知症のリスクが高まるという研究報告もある。
もちろん、個々の患者で高血圧の原因や症状が異なり、生活改善への意欲にも差があるので、一概に全部止めろとはいえない。しかし、十把一絡げで「一生飲め」と指導していたら、高齢者は薬漬けにされ、年40兆円もかかっている医療費を減らすことも不可能だ。
少なくとも患者は、降圧剤を止めるという選択肢があることを知っておいていただきたい。
※週刊ポスト2015年11月20日号