FWの竹内亜弥(29)も異色の経歴の持ち主だ。京都大学文学部哲学科卒業の才媛。現在はラグビーに集中するために休職中だが、出版社の新潮社に勤めている。
「大学時代まではバレーボールをやっていました。新潮社に就職が決まって、東京でも仕事をしながら何かスポーツを楽しみたいと思っていたんです。実は、アメフトに興味があったので、インターネットでチームを探していたんですけど、なかなか見つからなくて、結局、ラグビーのチームに辿り着いてしまって(笑い)。最初はルールの違いもわかっていませんでした」(竹内)
在職中、営業部に所属して、文庫や書籍の販売を担当していた彼女はもちろん読書家だ。好きな作家は『西の魔女が死んだ』の梨木香歩。ラグビーの遠征時にも常に3~4冊の書籍をリュックに忍ばせているという。
「女子ラグビーも多くの国でプロ化の波が進んでいます。現在は休職させてもらっていますが、個人的にはこれ以上ラグビーに時間を割くことは難しい。だから代表チームで活動できるのは今度の五輪まででしょうね。復職したら、編集業務に携わりたいですね」(同前)
桑井や竹内の他にも、サクラセブンズには、フジテレビ勤務の冨田真紀子(24)や、ANAで働く横尾千里(23)など、多様な職種の選手が集っている。そんな個性あふれる集団をまとめるのが、キャプテンの中村知春(27)。彼女は、電通東日本に在職中だ。
「ラグビーは痛みを伴う競技。そこに絆を感じます。隣のチームメートのために、自分が犠牲になれるか。だからこそ、自分がトライしても、みんながつなげてくれたトライだと心から思えるんです。このチームの長所はひたむきさや謙虚さ。ひとりでは身体の大きい外国人選手に敵わないけれど、みんなでまとまって泥臭く戦う姿をファンの方は応援してくれるのだと思う。大一番の五輪予選に向かって、がむしゃらに頑張りたいです」(中村)
キャラクターの宝庫であるサクラセブンズがリオ五輪本戦への切符を掴めば、大ブレークの可能性も秘めている。次に世界を驚かすのは彼女たちだ。
■取材・文/田中周治 ■撮影/岩根愛
※週刊ポスト2015年11月20日号