◆都内で唯一、保険料を下げた荒川区
ただし、必ずしも高齢者が多ければ保険料も高額となるわけではない。高室氏は「ポイントはどれだけの高齢者が要介護認定を受けているか」だと指摘する。
「高齢者でも元気で健康な生活を送っていれば介護は必要なくなり、要介護認定率は下がります。そうなれば、自治体が介護サービスに費やすお金が少なくなるので保険料が安くなるわけです」
神奈川県内で最も保険料が安い綾瀬市(3894円)が好例だ。
「綾瀬市は鉄道の駅が少なく、健康のために意識的に歩く人が多い。おかげで要介護認定率が県内で2番目に低く、介護サービスの給付が少ない。また、ひとり暮らしの高齢者が1割しかおらず、残りは家族と同居しており、家族介護が多いことも介護給付が少なくなる要因でしょう」(綾瀬市の担当者)
東京23区で2009~2014年度の保険料が最も高かった荒川区は今年の改訂で前年比2.2%減の5662円となった。急速に高齢化が進む都内で唯一、保険料を引き下げた区だ。
その要因の1つが、区が推進する転倒防止の体操「荒川ころばん体操」だ。高齢者がイスに座って足で文字を描いたり、両膝をのばすなど36種類の動作で、転びにくい体をつくる体操教室を区内26か所で定期的に開催している。
「ころばん体操だけでなく、栄養教室や口腔ケア教室も実施し健康的な高齢者が増えています。要介護認定者の伸びを抑えることで介護サービス費用の負担を減らすよう努めています」(荒川区の担当者)
山梨県内で最も保険料の低い北杜市では、高齢者が自ら介護予防の研修を受け、公民館や介護施設で「介護予防サポートリーダー」として体操の集いなどを開くボランティア事業を展開している。
「それによってボランティア自身の介護予防にもなっています。また、高齢者が歩いていける場所でお茶会やレクリエーションを行う『公民館カフェ』も盛んだったり、農作業をする高齢者が多いことも健康維持につながっていると思います」(北杜市の担当者)
※女性セブン2015年11月26日号