◆「東大野球部を参考にした」
今は東大駒場キャンパスに近い京王井の頭線沿線のアパート暮らし。週3回の部活の練習に加え、自宅近くの甲州街道を「信号が少ないから」とコースと定め、朝晩の練習を欠かさない。実験とレポートで半日を費やす日もあるが、講義時間の合間に課題を済ませ、練習時間を確保する。東大陸上運動部OBで監督を務める藤田靖浩さんはいう。
「浪人中にも記録更新してしまうなんて、ヘンな奴ですよね(笑い)。指導者やライバルがいなくても、自己管理してトレーニングできる。上級生も刺激を受けて相乗効果も生まれている」
東大陸上部は2年前の関東インカレ2部で30位と低迷。危機感を強めた当時の主将らがお手製のスカウト作戦に乗り出し、部の紹介冊子を全国の進学高で好記録を出した有望選手に送り始めたという。
「万年最下位からの脱却を目指す野球部などのやり方を参考にしました。それに反応して入部してきた第一号が近藤でした。チームとしての東大は予選会29位と箱根出場は遠いですが、タイムは昨年から15分以上も縮め、19年ぶりに東大記録を更新しました。近藤の存在が原動力となったのは間違いありません」(4年生の福島洋佑)
ちなみに東大が箱根出場を果たしたのは1984年が最後だが、2005年には当時1年の松本翔さんが関東学連選抜(現・関東学生連合)で8区を走った。松本さんはこういう。
「近年、全体的にレベルが上がっています。箱根駅伝への注目度が上がり、有力選手を集める大学も増えました。僕は予選会75位で学連選抜では8番目だったが、今年はタイムだけでなく順位もさらによい近藤選手が11番目ですから」
高速化の進む大学陸上で、東大のルーキーが箱根出場を目指す。出走メンバーの最終選定には今後の記録会の成績も加味されるといわれる。近藤はこう語る。
「自分の持ち味は“攻めて粘り切る”走りです。1万mの記録会でも自分の力を出し切ってベストの走りをアピールしたい。そして何としてでも箱根を走り、東大としての本戦出場への第一歩にしたいです」
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号