前述した2軍OBは、こうも記している。

〈メディアに取り上げられているのはごく一部で、当然、メディアには取り上げられていない部分がたくさんあります〉

 前出の青学大関係者は陸上部から離れていく選手を幾人も見てきた。

「“監督に辞めろと言われたので引退しなければならない”と泣いている選手もいました」

 ユーモラスな言葉とさわやかな笑顔が印象的な原監督の“別の顔”について、スポーツライターの酒井政人氏はこう語る。

「1軍2軍制を敷く名門校は少なくありません。例えば東海大学は1軍2軍の入れ替えを年に2回行ないます。競争意識を高め、ハングリー精神を養うために取り入れているんです。 2軍に落ちたことで腐ってしまい、やる気を失う選手もいることは否定できませんが、そもそもそういう選手は長距離に向いていないと思います」

 実際、悔しさをバネに這い上がった選手もいる。今年5月、箱根駅伝と並ぶ学生陸上界の大イベント・関東インカレの2部ハーフマラソンで優勝したのは、昨年9月まで2軍寮で生活していた池田生成(3年)だった。

「ハーフマラソンは昨年、神野が優勝した種目です。池田はレース後、『僕みたいな選手が勝ったことは、チームにとっても大きいでしょう』と“元2軍”としてのプライドを示しました。これには原監督も“ミラクルだ!”と称えました」(前出・スポーツ紙記者)

 昨年の神野はインカレ優勝を機に飛躍し、箱根5区・山登りの快走に繋げた。当然、池田への期待も高まる。

「池田は出雲、全日本こそ出場していませんが、箱根で好走できるレベルの有望選手に成長しています」(前出・酒井氏)

 こうしてチーム力をアップさせた原監督の手腕は見事と言わざるを得ない。

※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号

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