ちなみに私の「マサカリ投法」も、監督がカネさんだったから完成できたと思っています。あれは足と膝を使った理想のフォームを目指した結果生まれたものでした。
下半身で投げるために膝を使って足を大きく上げ、お尻を突き出してタメを作る。体が突っ込むのが早くなるのを防ぐために、体に壁を作ろうと、腰より高く左膝を上げて右膝が沈み込むようにしました。
もちろん独特なフォームですし、普通の指導者ならすぐにダメ出ししたと思う。実績のある人なら尚更です。でもカネさんは黙って見守ってくれた。
フォームを完成させた翌年、私は12勝を挙げてロッテの日本一に貢献することができました。自分なりには恩返しができたと思っています。
豪放磊落な性格ですが、「兆治はオレが育てた」などと偉ぶらない人。私には心から信頼できる人です。
●むらた・ちょうじ/広島県生まれ。1967年にドラフト1位で東京オリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)に入団。ダイナミックな投球フォームは「マサカリ投法」と呼ばれた。
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号