もっとも、初乗り距離を見ると東京2kmに対してニューヨークは320m、ロンドンは約260mにとどまる。チップを換算すると、日本のタクシーは長距離利用になればなるほど、ニューヨークやロンドンより運賃が安くなる仕組みだ。
こうした料金構造のなか、国の進める「初乗り半額」は利用者を潤すことになると大阪の格安タクシー会社「壽タクシー」の浦木山峰壽社長が指摘する。
「私どもの経験値では、タクシーに搭乗するお客さまの7~8割が2km未満で降車します。これが半額になったら多くのお客さまが喜ぶはずです」
とくに大きなメリットを享受するのがシニア層だ。超高齢化のなか、体力や健康の面から、わずかな距離の買い物や通院にも苦労する人が増えている。都内に住む60代男性がニュースを知って声を弾ませる。
「高齢で膝を痛めてから、徒歩圏内だった病院まで歩くのが辛くなりました。とはいえ、片道730円のタクシー代は高すぎるので我慢して歩いています。片道400円未満ならバス感覚でタクシーを利用できてありがたい。腰を痛めている妻の買い物も楽になるでしょう」
「初乗り半額」は低迷するタクシー業界に現われた久々の妙案と言えそうだ。
※週刊ポスト2015年12月11日号