国内

ヤクザを調査せぬ税務署 「署員を危険な目に遭わせられぬ」

「トーゴーサンピン」という言葉がある。すべて(10割)の所得を捕捉されて課税されるサラリーマンに対し、自営業者は5割、農林水産業者は3割、政治家は1割という不公平を揶揄するものだ。では暴力団はどうなのか。ジャーナリストの伊藤博敏氏がリポートする。

 * * *
 ヤクザの頭のなかには、「税金を払う」という概念がない。まして、自分が当局に調べられるとは想定もしていない。

「税務署? 来たことないなぁ。ワシ、申告するような収入ありませんで」(山口組系暴力団幹部)

 税務署の側にも、ヤクザから取ろうという発想はない。

「ヤクザの税務調査をしなくていい、という指示が上からあるわけではない。しかし犯罪収益を調査するようなものだから、我々の手にはあまる。署員を危険な目に合わせることはできない」(国税庁幹部)

 仮にヤクザのところに、税務調査が入ったらどうなるか。

「そら、猛烈なカマシを入れる。『取れるもんなら取ったらんかい!』と。ワシらの商売、なめられたら終わりですわ。調査に入ったら、絶対に後悔させてやります」(前出の幹部)

 暴力団の運営費に課税できないという“建前”はある。税務上、暴力団は任意団体となっており、PTAや町内会、大学のサークルと同じ扱いだ。暴力団にも慶弔費、事務所費、交通費、交際費、通信費などの経費が発生しており、それは傘下組員からの上納金で賄われている。これは町内会やサークルの「会費」と同じという理屈である。

 ただし、上納金といっても半端な額ではない。国内最大の山口組の場合、8月末の分裂(後述)前に70数組織があり、月の上納金額が1組織当たり約100万円だったので、それだけで年間10億円近い。PTAや町内会と同じレベルで考えること自体がおかしい。要は税務署にとってヤクザが怖かったし面倒だったのだ。

※SAPIO2015年12月号

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