こういうときこそ、外国人騎手です。C・スミヨンは期待に応え、絶妙の仕掛けを見せて圧勝。「やっぱり外国人騎手は巧い」という声が多く聞かれました。具体的にどこが巧いのか。なにが優れているのか。

 エピファネイアくらいパワーとスピードのある馬が、引っ掛からずに走るには騎手にもパワーが要ります。大きい馬体で上下動が大きく、日本人騎手の細い体と腕力では制御が難しいこともある。それで仕方なく馬群の一番後ろにつけざるをえない。

 しかし外国人騎手は引っ掛かっても“押して”中団くらいで我慢できる。スミヨンは身長があり(173cm)、体重も普段は54kgくらい。足が長くて下半身に力があります。馬の上下動の振幅を、足と下半身の力でうまく吸収できる。馬に不自由な思いをさせず、膝の動きでスピードをコントロールするのです。

「いつもなら行きたくて仕方がないのに、今日は4コーナーまで自然と抑えられちゃった。直線、力を出し切るぞ。おっ、ちょうどゴーサインが出た」

 エピファネイアはそう感じていたのではないでしょうか。

 外国人に限らず良い騎手全般に共通することですが、勝負所では体が勝手に動いている。「今だ!」と思ってからではコンマ数秒遅いのです。このことは誰も教えてくれないし、私も若手騎手に言わない。レース経験を重ねて自分で気づくしかない。やはり、感性が大事です。

※週刊ポスト2015年12月11日号

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