面白いのは、小池が必死に目で訴えるのに対して、『湯煙スナイパー』など多くの作品で「怖いお兄さん」を強烈な目力で演じてきた遠藤憲一が、目を閉じての難役に挑んでいること。ふたりが助け合う姿も見物なのだ。
また、マンガファンなら、ふたりが石ノ森章太郎の原作にそっくりで驚くはず。石ノ森章太郎といえば『仮面ライダー』など多彩な作品で知られるが、人情たっぷりの時代劇マンガ『佐武と市』も『少年サンデー』や『ビッグコミック』に連載されていたときから人気で、60年代にはモノクロアニメにもなっている。今回の撮影現場で初めて徹平佐武を見た私も「原作そっくり!」とびっくりした。マンガの佐武も世の矛盾に直面しては、ふと憂いを目に宿す。“うる目力”は佐武最大の魅力だ。
一方、世の裏表を知り尽くす市は、原作では、つるつるスキンヘッド。このドラマではどうなっているのかと思ったら、特殊メイクで見事なつるつるぶり! 聞けばこの頭を作るのだけで毎日数時間はかかるという。予告編にも出てきたが、そのシルエットはマンガの市とぴったり重なる。あまりに重なって笑えるくらいだ。
ドラマ冒頭、佐武が春画を見せられて赤面するシーンが出てくる。生真面目で純情なところも佐武らしいところ。そんな佐武を見守る市には独特のユーモアもある。雨宮望監督は、徹平佐武について「原作通り、すごくまじめだね。ぼくは俳優はスキがあって、スケベでいいと思っているので、彼にも頑張りすぎず、自分らしい佐武でいいと言いました。まじめといえばエンケンさんもまじめなんだよ(笑い)。時代劇だけど、テーマは現代的だし、ふたりはうまく助け合っていいコンビになった。面白いコンビだと思いますよ」
ラストには強烈な立ち回りもあり、見せ場は多い。30才までに時代劇に出たかったと意欲満々の徹平佐武のまじめゆえの“うる目力”を見届けたい。