「中曽根さんの時代まで、サミットに参加した歴代首相は英語もそれほど上手ではなく、各国首脳の談笑の輪に入ることが少なかった。中曽根さんは、サミットの写真で端にいると孤立しているように見られてしまうとの自覚を持っており、この時は『必ずレーガンの隣に立とうと決心していた』と話していました」
 
 昼食会を終えた中曽根首相はレーガン大統領と談笑しながら歩き、話を終わらせないように引き延ばして立ち位置をキープ。そのまま堂々と写真に収まり、日本の存在感を示した。それまではルールは緩やかで、過去の写真を見ると概ね在任期間は関係なく「主催国→大統領→首相」という順番だけが守られていたようだが、“中曽根事件”はその慣例を破ったことになる。
 
〈本来の慣例にのっとった序列では4位のカナダ・トルドー首相は、中曽根氏が入り込んだことで左端の8位の位置となった。EU(欧州連合)の前身であるEC(欧州共同体)委員会委員長のトルン氏は立ち位置は左端となるが、この時は本来の中曽根氏のポジションである左から2番目に位置した〉

 このエピソードは各国記者の間でも語り継がれ、その後、並び順が厳格化されるきっかけになったとも言われている。

※SAPIO2016年1月号

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