ビジネス

稲庭うどん 門外不出の製法公開し進化続け海外出店も

進化する伝統の味(稲庭うどん)

 江戸時代はお上に献上されていた、由緒正しい伝統の味──。それが、秋田の「稲庭うどん」だ。伝統を受け継ぎながら進化を続けるその秘密に迫る。

 * * *
 うどん県として知られる香川の「讃岐うどん」を筆頭に、福岡や大阪など、うどん文化は西で育まれたイメージが強いかもしれないが、東だって負けていない。

 西の横綱が讃岐ならば、東の横綱は秋田の「稲庭うどん」だろう。その特徴は対照的だ。太くて力強い讃岐うどんに対して、上品な細麺の稲庭うどん。讃岐は手軽さで人気に火が点いたが、稲庭うどんは江戸時代には佐竹藩を通じて将軍家へ献上されていた「高級品」だ。

 製法は長らく門外不出とされ、明治時代半ばまでは、宮内省以外ではほとんど食べられることがなかった、幻の逸品でもある。

 稲庭うどんの発祥は、寛文5年(1665年)とされる。「稲庭干饂飩」の宗家となる佐藤吉左エ門が製法を確立。元禄3年(1690年)に佐竹藩の御用品となり、江戸時代に入ってからは徳川家へ盛んに献上されるまでに評価が高まったという。

 その製法は約200年にわたって宗家の一子相伝として守られていたが、継承断絶を避けるべく、万延元年(1860年)に婿養子に出た息子にも伝授されることになり、初めて「外」に伝わった。そのときに創業されたのが、いまなお続く秋田の名店・佐藤養助だ。

 今年で創業から156年を迎える佐藤養助商店総務部の今野弘志氏がいう。

「明治10年(1877年)に開かれた『第1回内国勧業博覧会』に稲庭うどんを出品し、褒状を授与され『稲庭』ブランドが広まりました。明治20年(1887年)には宮内省御用達となり、大正天皇や昭和天皇ご即位のお祝いにも、佐藤養助は宮内省を通じて干うどんを献上しています」(以下「」内は今野氏)

◆3日3晩かける伝統の製法

 この由緒正しき稲庭うどんは350年間変わらず、すべて職人による手練り・手延べでつくられる。生地を足で踏んでこねる製法の地域もあるが、稲庭では決して足は使わない。

「稲庭が『日本一値段が高いうどん』なのは、製造に3日を費やし、すべて人の手で作られているから。製法そのものは伝承されてきたものから変えていません。

 ただ、味はどんどん良くなっている自信があります。昔は小麦を臼でひいていましたが、現代は製粉技術も向上しましたし、安定した空調管理もできるようになった。しっかり水分を抜くことでより白く、美しい麺に仕上がるんです」

 湯沢市稲庭町にある佐藤養助総本店で、実際にその味を堪能した。

 茹であげ、氷水でキリッとしめた麺はつやがあり、光が当たると美しく輝く。口に運ぶと、つるっとした喉ごしが爽やかだ。細いながらも歯ごたえがあり、つゆによく絡む。喉ごしの良さは太めのうどんと比べると別の食べ物に感じられる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン