◆タイカレーをつけ汁に

 稲庭は長く「庶民には手の届かないうどん」だった。転機が訪れたのは、昭和47年(1972年)のことだ。

 7代目が秘伝の製法を一般に公開するという、大胆な決断に踏み切ったのだ。

「理由は2つありました。気軽に買って食べられるものでなくては意味がない、という作り手の想い。また、『稲庭うどん』を産業として育成し、地域貢献したいという願いからでした」

 稲庭うどんを閉鎖的な世界から「地場産業」へ発展させたことで、地元に多くの雇用を生んでいる。

 現社長を務める佐藤正明氏は8代目にあたる。2006年には、稲庭うどんと秋田の郷土料理を提供する直営店を銀座にオープンさせた。

「8代目が掲げるのが、『継承と進化』。伝統はしっかり引き継ぎますが、時代とともにメニューに新しいものを取り入れる。最近注目を集めているのが、銀座で始めた『タイカレーつけうどん』。レッドとグリーンの2種類のタイカレーで食べるつけうどんです。秋田とは一見関係がなさそうですが、つけ汁には、県の名産品である比内地鶏やしょっつる(秋田の魚醤)が入っています。

 タイカレーつけうどんは銀座佐藤養助をはじめ都内3店舗と秋田県内の店舗でお出ししています」

 2013年には初の海外出店となる稲庭養助台北店をオープン。これは銀座店を訪れた台湾人の企業家が、店で食べたその味に惚れ込み「ぜひ、自国でも出店してほしい」と熱望したことで、業務提携という形で出店することが実現したのだとか。

 秋田から世界へ──。稲庭うどんは進化を続ける。

●取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2016年2月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン