中川:結局、「自分はリベラルだ」といったらリベラルになるんでしょうね。消費税の問題でも、増税反対派が左翼っぽく見られているけど、消費税が社会保障に使われるのだとしたら、格差是正につながるかもしれないわけですよね。
で、何が気持ち悪いのかというと、旧来の知識人が、「どっちの側に身を置けばリベラルで進歩的な人物に見られるか」という原理だけで動いていて、学生の運動を取り込めば、自分たちも急進派になれると思って支持していることですよ。
呉:その通りだね。外国人労働者の問題も同じ。みんな外国人労働者を受け入れるのは国際派でリベラル派だと思ってるけど、とんでもない間違い。外国人労働者を入れるというのは、国内に植民地をつくることなんだよ。外国に農園や工場をつくり、安い労働力を使って宗主国が豊かになるというのはわかりやすい植民地だけど、安い労働力を現地で使うか、国内で使うかというだけの違いでしょう。だから、絶対やめなきゃいけない。日本は朝鮮統治で懲りてるはずなんだよ。
中川:それしか日本が生き残る道はないという人もいますね。社会学者の橋爪大三郎さんは、今の状況だと、単に肉体労働者がいっぱい来ることしか考えてないんだけど、弁護士とか医師とか、そういった職業の人も育てて、きちんとその国の人がコミュニティをつくれるようにしろという「逆植民地化」を唱えています。
呉:そこまでいうなら、一理あると思うけど、それでも積極的には賛成しませんよ。やっぱり、朝鮮統治の失敗から教訓を学んでないからね。国内で労働力をうまく回して、生産効率をあげることに力を注ぐべき。
※週刊ポスト2016年2月5日号