ビジネス

男の育休阻むパタハラ 上司が被害者意識抱く背景も

一向に増えない男性の育休取得率(mits/PIXTA)

 いま、女性の社会進出や職場内での積極登用を促す動きが盛んになっているが、その一方で“パタハラ”被害が顕在化している。パタハラとは「パタニティー(父性)+ハラスメント(嫌がらせ)」の意味で、男性が育児協力のために取得する休暇や短時間勤務制度を阻む行為のことである。

 昨年12月に自民党の宮崎謙介衆院議員が「育休宣言」した際、党のベテラン幹部から〈議員はサラリーマンとは違う〉〈国会議員全体の評判を落としている〉〈育休を利用した売名行為〉などと一斉に批判を浴びたことは記憶に新しい。

 一般会社員とは立場も違う議員の育休取得。その是非はともかく、「男は仕事をするのが当然」という日本的風土はいまだに根強く残っている。『人事評価の裏ルール』(プレジデント社)などの著書がある人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、企業現場の実態を語る。

「若い男性社員の育休や時短勤務、ノー残業などの希望を受け入れないのは、主に40代以上の管理職です。

 上司にとってみれば『オレが見込んだ男だから育ててやりたい』と、片腕としていろいろな経験も積ませた末に育休を取得されると、仕事を途中で投げ出されたという意識に駆られてしまうのです。

 そこでパタハラが始まります。『お前、俺の顔に泥を塗る気か!』『育休なんて取ったら出世に響くぞ』『会社に戻ってきたら席はない』などと脅しをかけ、制度はあっても育休を取りにくくさせてしまうのです。その結果、会社を辞めざるを得なくなった男性もいます」

“イクメン支援”の意識改革が進まない現状は数字にも表れている。日本の男性の育休取得率はわずか2.3%(2014年/厚生労働省調査)足らず。政府は2020年までに13%まで高める目標を掲げているが、遠く及ばない。

 また、2013年に連合が男性社員1000人を対象に行ったパタハラ調査では、子供がいる525人のうち11.6%がパタハラを受けた経験があると回答。その原因は「上司や同僚の理解不足・協力不足」(57.3%)が最も多く、「制度利用を認めてもらえなかった」「利用すればキャリアに傷がつくと言われた」といった声が挙がった。

 前出の溝上氏は「もともと上司との信頼関係が希薄になっていることがパタハラを増幅させる要因」と指摘する。

「昔のように上司と飲みに行ったり家族ぐるみの付き合いをしたりする若手社員はほとんどいなくなったため、家庭環境が把握できないのです。

 上司と部下のコミュニケーション不足から、例えば共働きの奥さんがどんな仕事をしていて、仕事量や収入はどのくらいあるのか、また、出産後の育児分担や職場復帰の時期についてどういうプランを持っているのかも分からないため、育児支援の配慮が示せないことはあるでしょう」

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン