国内

「徳島に行きたくない」片道切符の省庁地方移転に役人がダダ

 安倍政権が突如、地方創生の目玉に打ち出した「中央省庁の地方移転」で霞が関の役人たちに“パニック”が起きている。政府は中央省庁と独立行政法人の34機関を移転候補にあげ、その中でも有力なのが消費者庁の徳島、文化庁の京都への全面移転だ。

 まず、消費者庁の誘致に熱心な徳島県は同庁のオフィスとしてヨットハーバーに面して建つ県庁舎の9階と10階を提供、徳島市街から車で40分ほどの神山町にサテライトオフィスを試験移転することも検討されている。現地を視察した河野太郎・消費者行政担当相は「十分可能性がある提案だ」と大乗り気だ。

「神山町にはIT企業が進出して職住接近のライフワークバランスを実践しています。過疎地域ですが、コンビニくらいはあります」(徳島県地方創生推進課)

 一方、文化庁の移転は馳浩・文部科学相が後押し。山田啓二・京都府知事に「京都移転を前提に議論したい」と約束しており、「両庁の移転はすでに安倍首相の内諾を得ている」(官邸筋)といわれる。

 これにひっくり返ったのが役人たちだ。とりわけ消費者庁は現在、首相官邸を眼下に望む東京・赤坂の超高層ビルにオフィスを構えるが、全面移転となると約500人の職員の多くが徳島行きとなりかねない。内閣府の中堅職員が語る。

「消費者庁の職員たちは深刻ですよ。全面移転が現実になれば、2~3年の地方赴任とは違って、『これからは一生徳島で暮らせ』ということです。文化庁の移転先の京都のような大都市ならまだしも、いきなり徳島なんて寝耳に水でしょう。私だって片道キップで徳島に行けという辞令が出たら公務員を辞めるかも知れない」

 地方移転を敬遠するもう一つの理由は、給料が大幅に下がることだ。国家公務員の給与制度では、物価調整の名目で勤務地に応じて7段階の「地域手当」が支給される。霞が関など東京23区内は最高の「1級地」で、基本給や扶養手当などの合計額に20%の地域手当が加算されている。

 それに対して徳島市は「7級地」で地域手当は3%。霞が関から徳島勤務になれば17%分の手当がカット、年収約1400万円のベテラン課長なら200万円近くダウンする計算だ。

「省庁移転で地方勤務になった場合でも、子どもたちは東京の学校にそのまま通わせるという人がほとんどだ。給料が2割も下がったら生活できない。地方創生の政治パフォーマンスの犠牲にされてはたまらない」(経産省の中堅官僚)

 目下、霞が関はスクラムを組んで、地方への差別意識丸出しの移転反対運動を展開中なのだ。

※週刊ポスト2016年2月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン