ただ、公正証書遺言でも無効となることやトラブルになることもあるという。
「形式上問題がなくても、“遺言が本人の意思で作られたかどうか”が争われて、無効になることがあります。たとえば亡くなる直前に作られていたり、何度も書き換えられていたりすると、本当に本人の意思だったのか、内容に疑いが生じてしまうのです」(江木さん)
本人は認知症で理解できていないのに無理矢理判子を押させたのではないか、都合のいいことばかりを並べて納得させたのではないか、などという疑念は、争いの大きな原因となり得る。
そこで大切なのが、遺言の意図を書き記すこと。初子さんのように、なんの血縁もない相手に遺産を残す場合には特に重要な意味を持つ。
「多くの裁判で争われるポイントは、“なぜこの内容なのか”“こんな遺言を書くとは考えられないから本心ではないのでは”といった本人の意思です。なので、相続人に疑念を抱かせないよう、なぜそのような内容にしたかを遺言に書いたり、日記やメモに理由や気持ちを綴っておくことが大事です。
後に争われたときに大きな証拠になります。また、認知症などから判断能力の有無が争われることもあるので、医師に判断能力があると診断書を書いてもらうとか、公正証書遺言を作成する場に同席してもらうのも手です」(江木さん)
遺言は弁護士に預けるのが安心だが、一般家庭の場合は信頼できる人に預けるか、しまっている場所を伝えておいてもいい。巻き込みたくない、巻き込まれたくない相続問題。“死人に口なし”とならないよう、事前の丁寧な準備が必要だ。
※女性セブン2016年2月25日号