カジュアルというのは、気をつけて言葉を選びましたが、要するに、こたつから抜け出してきたまんまのお姿。少なくとも、“お出かけ着”を着ているようには見えませんでした。
人間は不思議なもので、お出かけ着に身を包むと、気持ちもよそゆき仕様になるものです。他人様への気遣いや、社会的な常識をわきまえた立ち居振る舞いを自然とするようになります。
反対に、家の中と変わらない装いで外出すると、人目を気にしないというか、配慮がすっぽり抜け落ちてしまうのかもしれませんね。昨今、「よそゆき」という言葉はあまり使われなくなりましたが、私にぶつかって謝らなかった人たちは、この言葉を常用していた世代です。
それなのに東京の真ん中、上野の美術館へ普段着で出没してしまうとは、いったいどう解釈したらよいのでしょうか。「日本という国は、本当に変わったのね」と、しみじみ寂しく感じてしまいました。
それからもうひとつ。寒いのはわかりますが、ボンボン付き、そして毛玉付きのニット帽はいただけません。ご年配のニット帽姿は、何かが足りなく見えるんです。たとえば大人の知性とか、思慮とか、自覚とか…。
富裕層と、貧困層と、経済的な二極化が進んでいるといわれますが、“オバさんとオバさまの二極化”も進んでいるようです。電車の中でメイクしたり、おにぎり食べたりと、目が点になるほど図々しい人も、私が心から尊敬しているかたも、同世代の女性なのです。
まずは、外出する時は“よそゆき”を着ましょう。そしてちょっと人に肩が触れてしまった時は、立ち止まってきちんと相手の目を見て、「ごめんなさい」と言うこと。素敵なオバさまになるのは、意外と簡単ですよ。
オバさん、万歳!
※女性セブン2016年3月3日号