日本は韓国を信じて共同宣言を文書で残さなかったが、口約束では慰安婦像の撤去や元慰安婦支援の実現は困難で、政権が代われば約束を反故にして慰安婦問題は必ず蒸し返される。「相手が譲歩したら、こちらも誠意で応じるべきだ」という日本の美徳は国際社会では通用しない。
苦難の歴史を歩んだ朝鮮民族は他民族を決して信用せず、話し合えば妥協できるという発想がない。相手が謝罪しても「水に流す」ことは皆無で、半永久的に「恨(ハン)」を抱き続ける。
韓国では現在、人間関係を信頼できず西欧的な個人主義が蔓延し、若者が年上を尊敬しないなど、儒教由来の社会倫理が崩壊中だ。経済が行き詰まり若者は就職難に苦しみ、非正規社員が増えて貧富の差が拡大する。未来に希望を持てない人々が自ら命を断つ一方、年間2万人を超える韓国人が祖国を捨て米国や英語圏の永住権を獲得する。
日本への憎悪と侮蔑をひたすらに募らせながら、国内に山積する問題を直視しない韓国は自壊の道をたどる。そして韓国の本質をいつまでも認識しないお人好し国家・日本も反省すべき点はある。
今回の日韓合意が浮かび上がらせたのは、両国が内に抱える「宿痾」でもあるのだ。
●呉善花/1956年、韓国・済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。近著に『朴槿恵の真実 哀しき反日プリンセス』(文春新書)など著書多数。
※SAPIO2016年3月号