北朝鮮から日本へ逃れてきた人々を、全員無制限に受け入れると、声明を出す。そして海上保安庁やボランティアの船を北朝鮮沖合の公海に常時展開させます。公海上なら朝鮮人民軍も手を出せません。漁船などで脱北してきた人を発見したらすぐに保護し、日本で安全に生活できるよう支援を行なう。

 とはいえ、船を調達して海を越えるのはハードルが高い。現実的に日本に助けを求めるのは数百人程度。受け入れコストはたかが知れています。ただ、仮に少人数だとしても、難民たちが日本に救出される様子は世界中のメディアがこぞって報道するでしょう。

 韓国や中国のメディアも例外ではありません。間接的にでも情報が北朝鮮に伝われば「国外に脱出すれば、新たな人生が待っている」という朝鮮人民へのメッセージになります。人民の心は大きく揺さぶられることでしょう。

 しかし、海からの越境はなかなか難しい。陸伝いに逃げようとしても韓国国境である38度線付近には多数の地雷が埋められています。となれば大半が目指すのは……そう、中国国境です。

 当初は慎重でしょうが、話が広まれば、雪崩を打つように数十万人規模の難民が国境に押し寄せるでしょう。国境を警備する朝鮮人民軍の兵士では難民を食い止められません。兵士たちも朝鮮人民です。難民の苦しみを知る兵士たちは銃の引き金を引くのを躊躇する。場合によっては兵士自身が難民になる。やがて国境は開放状態になります。

 しかし難民たちが目指すであろう中国側が受け入れを認めるかという問題がある。そもそも中国は難民受け入れにメリットを感じていませんし、脱北者が殺到したときの国内の混乱を恐れています。

 亡命者を受け入れるか否か。中国の判断が、独裁政権の平和的な崩壊を実現できるか、最後の焦点となります。

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