次は健康リスク。日本人は有史以来、ずっと低層の木造住宅に住んできた。コンクリートの壁に囲まれた高層建築のマンションに本格的に暮らし始めたのは、高々この半世紀。そこにどういう健康リスクが潜んでいるのか、まだ実証されていない。
例えば、コンクリート製のゲージでは、木製や金属製に比べてマウスの死亡率が異様に高い、という実験結果がある。また、コンクリート製の教室では、木造に比べて小学生のインフルエンザ罹患率が高い。さらに、高層住宅では妊婦の流産率が高まるという実証データもある。
イギリスなどのヨーロッパ先進国では、可能な限り高層住宅での子育てを避けている。しかし、日本では若い子育てカップルが何のリスクも考えずにタワーマンションを購入する。
そこで、どのような健康リスクを抱え込んでいるのか、正確なデータはない。また国土交通省や厚生労働省は高層かつ鉄筋コンクリート造のマンションが人間の健康にどのような影響を与えているのか、本格的に調査・研究しようとはしない。
「隣人リスク」もある。マンションは「集合」住宅である。上下左右に4つの隣人を持つことになる。彼らが自分にとってすべて「良き隣人」である確率はどれくらいだろう?
隣人とトラブルになった場合、賃貸住宅なら引越せば100%問題は解消できる。しかし、大金を払って購入した分譲マンションの場合は、何かと複雑な問題が生じる。そこにかかる費用もかなりのものだ。
この他にも、「資産価値が下がる」、「廃墟になる」などの、購入することによって生じるいくつかのリスクがある。多くの人は、そういったリスクを考えずに「新築がいい」という日本人特有の価値観で新築マンションを購入する。
もちろん、新築の良さもある。今まで誰も住んでいないマンションに住むのは気分のいいことだろう。しかし新築であるが故のリスクは厳然と存在する。そのことに、もっと多くの人が気づくべきである。