国内

昭和初期のヤクザ 親分が子分引き連れ戦地に赴くことも

宮久一家の活躍が報じられた『文藝春秋』の誌面

 昭和のはじめ頃のヤクザは、平時においては賭博開帳、あるいは炭鉱や港湾、土木などの労働現場で働き、戦時になれば親分自ら子分を引き連れ戦地に赴くこともあった。人の嫌がる危険な仕事でも、すすんで引き受けたという。

 ヤクザが作った「日本戦後史」を、ジャーナリストの猪野健治氏が解説する。

 * * *
〈○月○○日、「さあ野郞ども出掛けるぞ」の聲に○○○名の乾分(編注:子分)はハネ起きた。そして御用船○○丸は義侠の親分乾分を乘せて○○日の朝、戰火の○○に上陸したのであつた〉

 これは日中戦争の最中、1937年11月発行の『文藝春秋』臨時増刊に掲載された「戰ひの上海から」の一節だ。「○」で伏せ字になっているのは、軍事機密にかかわる部分と思われ、戦時の報道規制ぶりが窺える。

 ここで子分を従えているのは、長崎・宮久一家の親分、宮崎久次郎。記事には、海軍の要請を受け、子分数百人を引き連れ上海に乗り込み、命がけで飛行場を建設するまでの顛末が描かれている。

 当時の上海は軍事的緊張の極みにあり、敵弾が降り注ぐなかで工事が強行された。途中、再三にわたって爆撃を受け〈一時は、賽の河原の石積みの樣に甲斐のない仕事の樣であつた〉という。

 同年8月末に飛行場は完成。艦隊司令部の長谷川長官は宮崎久次郎を旗艦出雲に招き、〈親しく感謝と慰問〉の言葉を伝えた。さらに、この話はヤクザの美談として「誉れの飛行場」と題された浪曲になり、海軍省提供でテイチクからレコードまで発売された。

 この一件は『文藝春秋』に載ったことで広く知られたが、ヤクザが戦場に乗り込んで軍部の仕事を請け負うことは、それ以前から行われていた。

 ヤクザと軍部の関わりが始まったのは日露戦争からで、激戦地となった「203高地」へ武器弾薬や食料を運ぶ兵站を担ったのが最初とされる。

 日露戦争では、京都の砂子川一家の西村伊三郎が伏見の第一六師団から要請を受け、幹部・子分50名を引き連れて従軍し、戦場で軍夫として弾薬運びなどに従事、活躍したことが文献に残されている。

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン