国内

「サヨク」を「パヨク」と呼び始めたネット論争とその余波

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

 かつてはネット上だけでとどまっていた論争が、リアルにあふれ出ることも珍しくなくなった。最近、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が注目している、リアルにはみ出したネット論争について、解説する。

 * * *
 出版不況が叫ばれて久しいが、小規模出版社の中にはネットを駆使し、確実な商売をしている会社もある。「そのやり方はどうよ……」と思うものの、表現の自由もあることだし、他人の商売にケチをつけるのはここでは慎む。

 それは「ガロ」で知られる青林堂である。同社の本は、アマゾンでは軒並み好調。『余命三年時事日記ハンドブック』は3月21日現在全体21位に。同書の第一章は〈在日韓国・朝鮮人の正体―日本人虐殺の歴史と「在日特権」〉とある。他にもシリア難民を揶揄していると批判された絵を含む『そうだ難民しよう!』や、排外デモを繰り返す在特会の桜井誠・前会長の『大嫌韓時代』もアマゾンで1ケタの常連だった。

 これらは「ネトウヨホイホイ本」である。青林堂は、とある層を完全に取り込むコンテンツを矢継ぎ早に出す術を知った。中韓やシリア難民、日本共産党にSEALDsらをネット上で積極的に叩く人物が、案外支持されていることを彼らは知っている。

 こうした論者のツイッターのフォロワー数は伸び、その過激発言はネットニュースにもなる。となれば、反発する一派との衝突が起きる。しかし、支持者は反対派を容赦なく揶揄し、青林堂の本をアマゾンで積極的に購入して「星5つ」をつける。「星1つ」をつけたレビューに対しては「参考にならない」ボタンを一斉に押し、怒りの鉄槌を振りかざす!

 例えば、〈く 糞喰う民族犬も当然……〉など、朝鮮半島の風習をテーマにしたと言い張る「朝鮮かるた」の販売を、在日の女性ライターが批判したら途端にバカ売れ。差別的だと批判をすることで、ますますネット上でのその本の存在感が上がるという構造を青林堂は作り上げた。書店がこうした書籍のキャンペーンを行ない、それに対する抗議活動でも発生すればこれもニュース化し宣伝になる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン