ビジネス

東芝の早期退職制度 「これを機に」と優秀な人材ほど流出

東芝のホームページ

 3月19日、証券取引等監視委員会が東芝の「不正会計問題」について田中久雄・前社長を任意で事情聴取したと報じられた。田中前社長が一連の利益水増しについて「違法性の認識」を否定しているとの報道は、少なからぬ東芝社員の怒りを買った。

「1億円以上の報酬をもらっていた経営トップが、責任逃れでいまさら『違法だとは知らなかった』なんて許されませんよ」

 そう憤りをあらわにするのは、かつて会社の中枢である経営企画部に在籍した50代のベテラン社員A氏だ。転職も考えたが、ローンが残る自宅、大学受験を控えた娘、そして同居する80代の両親―そうした状況を踏まえると、会社に残る決断しかなかったという。

 昨年発覚した東芝の不正会計事件。水増しされた利益はわかっているだけで2300億円にのぼる。

 2016年3月期決算は7100億円の赤字の見通し。創業以来の危機に突き当たり、東芝はリストラと事業の切り売りに走っている。

 2015年10月、室町正志社長は自身が工場長も務めたことがある画像用半導体の主力・大分工場をソニーに売却。12月には家電・半導体部門を中心に1万1000人の社員削減を発表した。3月17日には、東芝の「顔」である白物家電事業を中国家電大手「美的集団」に売却することが明らかになったばかりだ。

 前出・A氏は不正会計の発覚以降、職場は一変したと語る。

「この数か月、どんどん同僚が辞めていきました。早期退職に応じた人には割増の退職金が出るから、優秀な人材ほど『これを機に』と出て行ってしまう。研究職だった同期は早々と大学に再就職しましたよ」

 30代営業職のB氏の証言。

「うちの部門でも40人中10人くらいの先輩が会社を去りました。リーマンショックの時を上回る赤字ですから(2009年3月期で3988億円)、もう先はないかも」

 とはいえ、「まだウチは恵まれているほうかも」とA氏は言葉を継いだ。

「退職金は50代前半なら通常の3000万円弱に上乗せがあって5000万円くらいにはなりますからね」

 経営危機の会社としてはたしかに恵まれているようにも見える。

※週刊ポスト2016年4月8日号

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン