折しも、三菱商事は2016年3月期連結決算で発足以来初となる1500億円の最終赤字に沈む見込みで、事業構造の見直しや収益体質の早期改善が不可欠だ。ローソン経営にだけ肩入れするほど余裕はないだろうが、明るい材料もある。
今年4月より三菱商事の新社長になる垣内威彦氏は商社の事業柱である資源畑ではなく、食糧・食品畑の出身。しかも、ローソン新社長の竹増氏の直属の上司だった時代があるうえ、垣内氏自らもローソンの社外取締役を10年務めた経験を持つ。それだけローソンの経営には理解がある。
今後、竹増氏は昵懇である三菱商事との連携を密にしながら、海外展開、新規事業、M&Aを中心にローソンの事業規模を一層広げていくという。だが、そこで気になるのが玉塚氏の役割だ。今のところ、本業の国内コンビニ事業に注力するようだが、「いずれ竹増氏に全権を譲ることになるだろう」(業界関係者)との見方が一般的だ。
前出の河野氏は、こんな懸念を口にする。
「玉塚氏は体育会系出身らしいリーダーシップで組織をボトムアップさせることに長けていました。そもそも、コンビニ経営は各地のフランチャイズオーナーとの関係がとても重要で、時には膝詰めで直談判しなければならない場面も多い。
しかし、竹増氏の印象は玉塚氏とは正反対で、良くも悪くも“三菱紳士”。今後、店舗オーナーたちの信頼を得て『ローソンの顔』になるのは容易なことではありません」
いずれにせよ、コンビニは全国に5万5000店を超え、飽和状態にある。しかも、新生ファミマは店舗数でローソンを抜き、セブンイレブンに匹敵する規模に躍り出る。このままローソンが存在価値を高められずに埋もれてしまえば、商社を巻き込むどころか、自ら「コンビニ再々編」の渦に巻き込まれてしまう恐れも否定できないだろう。