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会社が季節の行事への参加を強要 弁護士の見解は

 新年度の始まりは、何かとバタつく季節。歓迎会やお花見など、“時間外”の拘束を求められることも多いのがこの季節だが、会社が年間行事への参加を共用することは、この指示は法的に問題ないのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 イベント会社に勤めています。憂鬱なのは会社が季節の年間行事に強制参加させること。参加だけならまだしも、正月明けの初出勤では紋付き袴を強要されます。断わるとボーナス査定に響くかもしれないので運動会も意に反し参加しています。このような会社の行事参加指示は、罪にならないのですか。

【回答】
 他人に行動を強制することが「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせる」場合は、刑法の強要罪になり、三年以下の懲役で処罰されますが、強制とはいえ会社が行事参加を断わると暴力をふるうことはないでしょうから、罪になることはないです。

 従業員は就業時間内の労務提供を約して雇用されています。労務外の私生活や自由な時間にまで会社は拘束できませんし、嫌なら断わればよいのです。しかし、問題がないわけではありません。

 まず、就業時間に実施される会社としての一般的な誰でも予想できる行事(例えば、正月や創立記念日の式典参加等)への出席を業務命令として命じられたときには、通常これに従う契約上の義務があるので、拒否すると懲戒等の不利益処分を受ける可能性があります。

 しかし、年間行事中、一般の会社では実施されず、社会常識に照らして労務提供の範囲とは解されない行事の場合は、その参加が就業規則などで労務提供の範囲内として義務付けられているかどうかで違ってくるでしょう。

 また、参加の服装指定も同様であり、会社が世間の常識を超えた服装を要求するのであれば、そのことが雇用契約で合意されている必要があります。そして、あなたが紋付き袴着用義務があることを承知で入社したのならば、その義務があるのはやむを得ません。そうした約束がない場合には、常識的な服装以外の装いを義務付けられません。

 もっとも、拒否すると事実上の不利益が生じる可能性もあります。勤務評価には、評価者の主観的な要素が入らざるを得ないからです。その結果、あなたが心配するようにボーナス査定に影響する可能性があるのはご懸念のとおりです。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年4月15日号

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