<断捨離が流行り、終活という言葉が世を席巻しているが、その前に、今、このときをより豊かに暮らしたいと望む女性がいて、愛情も物質も地位も名誉もほしがったとしても、誰が非難出来るだろうか>。ノンフィクション作家・工藤美代子さんは、話題の新著『後妻白書 幸せをさがす女たち』で「後妻という生き方」を選んだ女性たちに、そうエールを送った。翻って私たちは、来たる老後にどんなイメージを持っているだろう。ただ楽観するのでも、ましてや悲観するのでもなく、不確定要素が多いことを覚悟しながら、それでも上を向いて、明るく幸せな未来を描きたい。漫才師の内海桂子さん(93才)が、自身の幸せな夫婦の姿を語る。
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77才のとき、今のマネジャーである亭主と結婚しました。戸籍上では初婚です。あの人はアメリカの航空会社で働いていたので、海を越えて300通も手紙をくれ、最後の手紙に「結婚してください」と書いてあったんです。
それまでの私はひとり暮らしでしたが、ちっともさみしくはなかった。働いていたから。
お酒を注ぐ、三味線を弾く。それって、ひとりじゃないでしょ? もしあの人と出会ってなくても、そういう毎日だったし、そもそも私をひとりで置いておく男はいなかったでしょう。大昔、「私、お妾さんなんじゃないかしら」と思う関係の人もいました。でもね、本当のお妾さんになったことはないんですよ。男の人にお金やモノを与えてもらったことが一度もないの。この家だって、自分で稼いだ金で建てたんですよ。だから、結婚してもしなくてもどっちでもよかったんです。成り行きで今の形になっただけ。
でもまあ、ふたりでいるといいこともありますよ。テレビを見ていて、英語が出てきたら「あれ何て言ってるの?」「これこれしかじか」と教えてくれる人がいる。朝起きたらご飯ができていて、冷めないようにとタッパーに入れてタオルをかけて、こたつの中に入っている。まあ、あの人はマネジャーとしてこの家に入ったわけだから、身の回りのこともしてくれるわけですが、それでもこの年でこんな生活ができるとは思っていませんでしたね。
私ももう94才。何が幸せってわけじゃないけれど、あれがいるから、いろんなこと考えなくてもいいんでしょうね。
※女性セブン2016年4月21日号