ライフ

「数」を集めて錦の御旗とし何を主張してもよい傾向に懸念

ネットニュース編集者・中川淳一郎氏

 ネット発の待機児童問題が社会問題化したことで、ネット署名も、ネットだけでなくリアルの世界でも影響力を及ぼし始めたかのようにみえる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、数を集められればどんな主張も可能であるかのような最近の傾向に懸念を示す。

 * * *
 昨今のメディアの文脈においては、「保育園落ちた日本死ね!!!」という「はてな匿名ダイアリー」に書き込まれた日記が多くの待機児童問題に悩む親たちの共感を呼び、国会を動かし、国会前のデモに繋がり、2万7000もの署名を集めてついには政権も待機児童問題に取り組む姿勢を見せた──となっている。まことにめでたいことである。これで諸問題が解決に向かってほしいものである。

 しかしながら昨今、「こんなに苦しい」ということについて「数」さえ集めればそれを錦の御旗とし、何を主張しても良いといった論理がまかり通る傾向には若干の懸念も抱いている。今回の件はよかったにせよ、ネット上ではこの「民意の勝利」といった文脈の裏で反対する声も出ていた。それは地方在住者の声である。次のツイートに集約されているだろう。

〈狭いところにぎゅうぎゅう集まって、それで子どもがー保育園がーって言ってたって、地方民から見れば馬鹿馬鹿しくてしょうがないんだよ。そんなに子供預けたいなら地方に来ればいいじゃないか。地方にだって職場はある。都会に固執して、金に固執して、地方から見てると阿呆過ぎてしょうがないんだよ〉

 報道では前出の2万7000という数が「大勢の人々の苦しみ」の象徴となっているが、これはもう少し引いた目で見た方がいい。

 というのも、これは通常の署名より、もう少しお手軽だからである。この数字はchange.orgという簡単に署名活動を立ち上げられ、誰でも署名可能なサイトのものなのだが、時に困惑するような署名の呼びかけも立ち上がる。「:」の前が、署名の宛先である。

〈TOKYO MX:岡本夏生さんを「5時に夢中!」に復帰させてください〉
〈民進党:山尾志桜里議員を民進党の代表にしてください!〉
〈株式会社ヤクルト球団衣笠社長:スワローズクルーポイント交換を遠隔地でも交換でき配送で届くようにして欲しい〉

関連キーワード

トピックス

ゼンショーホールディングスが運営する「すき家」が問題の画像についてコメントした(時事通信フォト)
【「味噌汁にネズミの死骸」で新展開】すき家がネズミ混入を認めて謝罪「従業員が提供前に商品状態の目視確認を怠った」 約2ヶ月にわたり非公表 昨年には大手製パン会社で混入の事例も
NEWSポストセブン
水原の収監後の生活はどうなるのか(AFLO、右は収監予定のターミナル・アイランド連邦矯正施設のHPより)
《水原一平被告の収監まで秒読み》移送予定刑務所は「深刻な老朽化」、セキュリティレベルは“下から2番目”「人種ごとにボスがいて…」 “良い子”にしていれば刑期短縮も
NEWSポストセブン
性被害により、バングラデシュの少女が8歳という幼さで亡くなった(地元メディアのFacebookより)
《バングラデシュ・少女殺害事件》「猿ぐつわをつけられ強制的に…」「義父の犯行を家族ぐるみで手助けした」 “性被害隠蔽殺人”も相次ぐ
NEWSポストセブン
眞子さんの箱根旅行のお姿。耳には目立つイヤリングも(2018年)
小室眞子さんの“ゆったりすぎるコート”に「マタニティコーデ」を指摘する声も…皇室ジャーナリスト「ご懐妊でも公表しない可能性」
NEWSポストセブン
原宿駅を降りてすぐに見える「竹下通り」(時事通信フォト)
《潜入レポート》原宿・竹下通りの偽ブランド品販売店にキャッチ男性に誘われ入店 「売っているのは本物?偽物でしょう」と聞くと…キャッチ男性がとった行動
NEWSポストセブン
放送100年という記念の日に各局では、さまざまなジャンルの特番が放送される(写真/PIXTA)
《各局の現在地が鮮明に》“放送100年”の日に見えたフジテレビの危機 ブレないテレ東、“実より名を取る”テレ朝 
NEWSポストセブン
3月1日に亡くなったフリーアナウンサーのみのもんたさん
《みのもんたさんは焼き肉で…》“誤飲”の恐ろしさ「窒息事故発生件数が多い食品」と「事故が起きた場合に重症となる割合が高い食品」、まったく異なるそれぞれのトップ3
女性セブン
サインと写真撮影に応じ“神対応”のロバーツ監督
ドジャース・ロバーツ監督が訪れた六本木・超高級和食店での“神対応” 全員のサインと写真撮影に応じ、間違えてファンの車に乗ってしまう一幕も
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”女子ゴルフ選手を待ち受ける「罰金地獄」…「4人目」への波及も噂され周囲がハラハラ
週刊ポスト
大村崑さん、桂文枝師匠
春場所の溜席に合計268歳の好角家レジェンド集結!93歳・大村崑さんは「相撲中継のカット割りはわかっているので、映るタイミングで背筋を伸ばしてカメラ目線です」と語る
NEWSポストセブン
大谷翔平の第一号に米メディアが“疑惑の目”(時事通信、右はホームランボールをゲットした少年)
「普通にホームランだと思った」大谷翔平“疑惑の第1号”で記念ボールゲットの親子が語った「ビデオ判定時のスタンドの雰囲気」
NEWSポストセブン
水原一平(左、Aflo)と「親友」デビッド・フレッチャー(右、時事通信)
《大谷翔平のチームメイトに誘われて…》水原一平・元通訳が“ギャンブルに堕ちた瞬間”、エンゼルス時代の親友がアップした「チャリティー・ポーカー」投稿
NEWSポストセブン