「押し紙」問題を追及してきたジャーナリストの出井康博氏が語る。
「販売店にとって契約部数を上回る押し紙は損失になるが、これまでは損失分を折り込みチラシの収入で補って利益も出ていた。ところが、折り込みが減ったために販売店のビジネスモデルが成り立たなくなっている。
朝日の本社は今回、公取委の指摘を受けたことで販売店に表向き『押し紙は断わっていい』と通告したが、実態は押し紙1部につき月額1500円の補助を出し、販売店が簡単に押し紙を切れないようになっている。販売店にとっても痛し痒しなんです」
朝日新聞広報部は「取引制度の改定は、経緯についても改訂の趣旨についても事実と異なります」と答えている。
だが、公取委が本格的に押し紙摘発に乗り出せば、新聞社は大打撃を受ける。O記者がいうように660万部のうち「25~30%が押し紙」だとすると、朝日の部数は一気に200万部近く減る。
それだけにはとどまらない。新聞社の経営状況に詳しい経済評論家の渡邉哲也氏は「不当利得返還請求」が起きる可能性を指摘する。
「新聞の広告料は販売部数で決まる。仮に公取委が押し紙の是正命令を出せば、部数の水増し、つまり広告料金水増しを示す法的証左になり、広告主は新聞社に対して民法上の不当利得返還請求を起こすことができる。サラ金の過払い金の返還と同じで過去10年間さかのぼって請求できます」
公取委の「押し紙規制」の動きに戦々恐々となるのは当然だろう。
※週刊ポスト2016年4月29日号