「打ちたい手を打つ」ことと並んで、井山の代名詞となっているのが「戦う碁」だ。井山とここ2年続けて王座戦を戦った村川大介八段(25)はいう。
「井山さんは常々、若手棋士に『碁は戦いだ。戦わないで勝てるほど、碁は甘くない』と話しています」
「戦う碁」は国際戦で圧倒的な強さを見せる中国、韓国の影響が強い。井山の国際戦での優勝は過去わずか1回。ハードな国内対局に追われて、世界に打って出る機会は年2回程度と限られているのが現状だ。
「中国・韓国の棋士には『どうして国際棋戦に出てこないの?』と言われますが、少ないとはいえチャンスがなかったわけではないですし……。日本碁界のためにも頑張りたいですね」
◆いやま・ゆうた:1989年5月24日生まれ、大阪府出身。5歳でテレビゲームをきっかけに囲碁を始め、6歳で石井邦生九段に弟子入り。師匠との約1000局に及ぶネット対局と実戦で才能を開花させ、中学入学と同時にプロ入り。20歳4か月で史上最年少名人の記録を更新し、4月20日に史上初の七冠を獲得した。趣味はスポーツ観戦、好きな漫画は『名探偵コナン』、好きな芸人はダウンタウン。
取材・文■甘竹潤二 撮影■田中智久
※週刊ポスト2016年5月20日号