ライフ

「アレだよ、アレ」は記憶にとって危険なサイン 防ぐ方法は?

「アレだよ、アレ」を防ぐ方法は?(写真:アフロ)

 職場で、家庭で、あるいはレジャーの場で、固有名詞を思い出せずにもどかしい思いをする中年世代は多い。そんな時につい「アレだよ、アレ」と口をついてしまうが、本人以上にもどかしいのは、それを聞かされる側だ。中堅メーカー勤務の30代会社員がこぼす。

「50代の部長からの指示は『アレ、出しといて』とか、『アノ人によろしく』ばかり。話の内容から想像して“報告書はすでに提出しました”“承知しました。取引先の○○課長ですね”と答えるのですが、ひどい時は『アレを、アノ人に、アレしといて』ですから、禅問答ですよ(苦笑)」

 歳を重ねるにつれて増える「アレ」。食卓の醤油瓶も、朝ドラのヒロインの名前も、仕事に欠かせない大事な書類も、次から次へと「アレ」に“改名”されていく。

 ついつい“年齢のせいだからしょうがない”“伝わっていれば問題ない”と片付けがちだが、実は「アレだよ、アレ」は危険なサインなのだという。横浜新都市脳神経外科病院の眞鍋雄太・認知症診断センター部長が説明する。

「“アレ”や“ソレ”といった指示語は誰でも瞬間的に使いますが、問題は時間が経っても“アレ”が何を指しているのかを思い出せない場合です。

 数分後、数時間後であっても思い出せる場合は、自然な老化現象としての記憶力低下です。いうなれば“良性の物忘れ”と表現できます。しかしいつまで経っても“アレ”のままだったり、さらに深刻なケースとして自分が“アレ”を連発していたこと自体を忘れてしまったりするようなら認知症を疑う必要が出てくるでしょう」

 しかも厄介なのは「アレだよ、アレ」の使い方によって、危険度が異なる点だという。例えば、「今日初めて訪問する会社……アレ、ひらがな3文字の……」の場合は、瞬間的な記憶(短期記憶)の欠落で、「良性の物忘れ」の可能性が高い。

 だが、その会社が「長年の取引先」だった場合は危険度が高くなる。単なる固有名詞ではなく、それまで自身が関わってきた経験(エピソード記憶)まで忘れている可能性があるからだ。

「前者は記憶を司る部位である海馬の細胞が減少して生じる『海馬萎縮』という現象が主な原因です。30歳頃から人間の脳では1日に10万個の神経細胞が死滅するとされ、当然、それに比例して記憶力は低下します。結果、新しい情報を覚えられなくなったり、必要度の低い記憶を忘れていくのです。

 一方、後者は加齢による脳細胞の死滅に加え、アミロイドβという脳細胞の老廃物が脳内に蓄積することによって生じる現象です。この老廃物が海馬などに溜まることで、エピソード記憶を含む記憶力が著しく低下するといわれており、日本人の認知症の6~7割を占める『アルツハイマー型認知症』がこれにあたります」(眞鍋氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン
チャリティーバザーを訪問された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《4年会えていない姉への思いも?》佳子さま、8年前に小室眞子さんが着用した“お下がり”ワンピで登場 民族衣装のようなデザインにパールをプラスしてエレガントに
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。千葉のビジネス専門学校へ入学しようと考えていたという
「『彼女がめっちゃ泣いていた』と相談を…」“背が低くておとなしい”浅香真美容疑者(32)と“ハンサムな弟”バダルさん(21)の「破局トラブル」とは《刺されたネパール人の兄が証言》
約2時間30分のインタビューで語り尽くした西岡さん
フジテレビ倍率2500倍、マンション購入6.2億円…異色の経歴を持つ元アナ西岡孝洋が明かす「フジテレビの看板を下ろしたかった」本当のワケ
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。アルバイトをしながら日本語を学んでいた
「ホテルで胸を…」11歳年上の交際相手女性・浅香真美容疑者(32)に殺害されたバダルさん(21)の“魅力的な素顔”を兄が告白【千葉・ネパール人殺害】
佳子さまの“着帽なし”の装いが物議を醸している(写真/共同通信社)
「マナーとして大丈夫なのか」と心配の声も…佳子さま“脱帽ファッション”に込められた「姉の眞子さんから受け継ぐ」日本の伝統文化への思い
週刊ポスト
医師がおすすめ!ウイルスなどの感染症対策に大切なこととは…?(写真はイメージです)
感染予防の新常識は「のどを制するものが冬を制する」 風邪の季節に注意すべき“のど乾燥スパイラル”とは?
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」に出席された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《秋の園遊会》 赤色&花の飾りで“仲良し”コーデ 愛子さまは上品なきれいめスタイル、佳子さまはガーリーなデザイン
NEWSポストセブン
真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン