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感染予防の新常識は「のどを制するものが冬を制する」 風邪の季節に注意すべき“のど乾燥スパイラル”とは?

医師がおすすめ! ウイルスなどの感染症対策に大切なこととは…?(写真はイメージです)

医師がおすすめ! ウイルスなどの感染症対策に大切なこととは…?(写真はイメージです)

 いつまで続くのかと日本中をうんざりさせた長い夏がようやく終わり、短い秋に続いて冬の足音が聞こえてきそうだ。季節の移り変わりとともに襲ってくるのが、風邪などを引き起こす“冬ウイルスの猛威”。すでに、各地でインフルエンザの流行がはじまったことが報じられている。専門家に、ウイルスが活発になる冬を乗り切るための“2つの対策”を聞いた。

冬の東京はサハラ砂漠より乾いている!?

 風邪の原因のうち8〜9割はウイルス感染によるものとされるが、風邪を含む様々な感染症の原因となるウイルスには湿気を好むものと乾燥を好むものがあり、それによって流行する時期も異なる。冬の乾燥した空気を好んで流行する感染症の代表例は、インフルエンザや感染性胃腸炎(ロタウイルスやノロウイルス)などが挙げられる。特に12月〜2月は湿度が低く、こういったウイルスたちが猛威をふるう時期となるのだ。

 ちなみに東京では、北西から乾いた空気が流れ込む冬の時期になると湿度が40〜50%台まで低下。月によっては最小湿度が20%を下回ることもあり、これはなんとサハラ砂漠と同程度以下の乾燥状態だという。

ウイルスには湿気を好むものと乾燥を好むものがあり、流行する時期も異なる

ウイルスには湿気を好むものと乾燥を好むものがあり、流行する時期も異なる

気温(℃)と相対湿度(%RH)の関係によって、空気中の水分量を示す「絶対湿度」がわかる。絶対湿度が1立方メートル中7g以下の環境では、インフルエンザウィルスの約20%が生存するとされ、流行しやすい状態だといわれている。12月〜2月は絶対湿度が低く、ウイルスたちが猛威をふるうのだ

気温(℃)と相対湿度(%RH)の関係によって、空気中の水分量を示す「絶対湿度」がわかる。絶対湿度が1立方メートル中7g以下の環境では、インフルエンザウィルスの約20%が生存するとされ、流行しやすい状態だといわれている。12月〜2月は絶対湿度が低く、ウイルスたちが猛威をふるうのだ

「のどを保湿」し、線毛を守ることがウイルス防御の要

「10月以降、日本各地でインフルエンザによる学級閉鎖が発生しているというニュースが続いていますし、当医院でも急激に患者さんが増えていますね。気温が急速に低下して空気が乾燥していることが一因だと思います」

 そう語るのは、そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院院長の内尾紀彦先生。コロナ禍以降、手洗い・うがい・マスクの習慣が身についた人は多いだろうが、どれだけ丁寧に行っても「ウイルスを防ぎきることはできない」ようだ。

 そして体内に侵入してしまったウイルス対策として重要になってくるのが「のどのケア」だという。

「ヒトのからだには、ウイルスへの防御機能として『粘膜』と『免疫機能』の2つが備わっています。のどの粘膜には『線毛(せんもう)』という非常に微細な器官があり、体内に侵入したウイルスを捕まえて体外に排出する働きをしています。これが第一の防御機能です」

 咽頭から肺にかけて気道の内壁は「線毛」と「粘液」に覆われている。ウイルスが体内に侵入して鼻やのどの粘膜に付着すると、この線毛が活発に動いてウイルスを捕らえ、くしゃみ、鼻水、咳、たんなどによって外へ押し出してくれるのだという。

「しかし、線毛には水分量が減少すると運動能力が低下するという弱点があります。のどが乾燥して粘液の量が減少すると、線毛の動きが弱まり、ウイルスの排出機能が十分に発揮されません。これによって『のど乾燥スパイラル』が起こりやすくなってしまうのです」

「のどのケア」がウイルス対策として重要になってくる

「のどのケア」がウイルス対策として重要になってくる

冬こそ、感染予防のためにこまめな水分補給が大切なのだ

冬こそ、感染予防のためにこまめな水分補給が大切なのだ

風邪症状を長引かせる「のど乾燥スパイラル」とは?

 湿度が低下して空気が乾燥すると、のどの粘液が減少して線毛の働きが弱まり、ウイルスが気道にとどまりやすくなってしまう。すると免疫反応としてのどに炎症が起き、せきやたんといった「風邪」の症状が出やすくなる。のどの炎症が長引くと線毛も傷を受けて運動がさらに低下してしまう……。

 これが、内尾先生のいう「のど乾燥スパイラル」だ。

風邪症状を長引かせる「のど乾燥スパイラル」のメカニズム

風邪症状を長引かせる「のど乾燥スパイラル」のメカニズム

「このスパイラルを防ぐには、まずしっかり水分補給をしてのどを潤し、さらにマスクを使ってのどの水分が逃げるのを防ぐ、という方法が有効です。冷たい水より少し温めたぬるま湯のほうが、吸収が良くなり、おすすめです。また、のど飴は唾液の分泌がうながされることでのどが潤うという効果はあるのですが、糖分を過剰に摂取すると『浸透圧利尿』といって尿の量が増加し、かえって水分を失ってしまう場合もあります。とり過ぎには注意が必要です」

 大きな声でおしゃべりをすることが多い幼児や、基礎代謝が低下する高齢者は、特にのども乾燥しがち。こまめな水分摂取を心がけてほしいと内尾先生は話す。

「免疫機能」を高めてウイルスの増殖を防ごう

 内尾先生が言うもう一つの防御機能が「免疫」だ。

そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院院長・内尾紀彦先生

そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院院長・内尾紀彦先生

「免疫機能を高める必要があるということはよく知られていますが、ウイルス対策には特にのどの免疫が重要な働きをします。

 のどの粘膜免疫には、ヒトの体内で最も多く産生される免疫物質『IgA抗体』(免疫グロブリンA)が存在します。この抗体が、外から侵入してくるウイルスの増殖を防ぐ働きをしてくれるのです」

 しかし、栄養バランスの乱れや、睡眠不足・運動不足といった生活習慣の乱れ、ストレスの蓄積などで、IgAの分泌量が減少したり全身の免疫機能が低下したりすることもある。そうなると風邪などの感染症にかかりやすくなるという。

 つまり、ウイルスなどの感染症対策に大切なのは、のどの潤いと免疫機能を維持するケアということだ。

のどの保湿と免疫で「のど乾燥スパイラル」を防ごう

のどの保湿と免疫で「のど乾燥スパイラル」を防ごう

「水をこまめに飲んで生活習慣を整えることを心がけてください。それに加えて栄養バランスの良い食事をとることも重要ですね。忙しくて難しいという方はサプリメントや機能性表示食品などで、必要な栄養素を補うのもいいと思います。のどのケアとして考えると、たとえばラクトフェリンをとるのもおすすめです」

 ラクトフェリンとは、ヒトの母乳をはじめとする多くの哺乳動物の乳に含まれるたんぱく質の一種。とくに出産後すぐに分泌される「初乳」に多く含まれており、ウイルスに対する防御反応を高める働きや、過剰な炎症を抑える作用など、赤ちゃんだけでなく大人にとっても健康を支える働きを持つ大切な成分だ。

「ラクトフェリンにはいろいろな働きがありますが、この時期に注目したい効果が2つあります。1つは、粘膜や唾液に存在する保水成分に反応して複合体を作り、のど粘膜の水分を保持する機能を高めてくれるということ。つまり、のどの乾燥を防ぐ効果です。もう1つは、体内の免疫機能を維持してウイルスに対する防御力を高める効果です」

 いずれにしても、冬のウイルス対策で肝心なのは「のどの保湿」と「免疫機能の維持」。つまり「のどを制するものは冬を制する」ということ。“のどケア”を毎日の習慣に取り入れ、この冬も元気に乗り越えよう!

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取材協力/ウェルネス総合研究所

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