≪映画の舞台は、ジャ監督の出身地であり、ジャ監督の映画ではおなじみの山西省。作品で主役「タオ」を演じるのはジャ監督の妻でもある名女優・趙濤(チャオタオ)。ともに彼女を慕う「ジンシェン」と「リャンズー」という男性とともに、3人の運命の変転が、この映画の見どころである。≫
──「ジンシェン」は、改革開放の波に乗って炭鉱ビジネスで大金を掴み、「リャンズー」は炭鉱夫として肺の病気に冒され、命の危険にさらされます。この2人の対照的な人生こそ、中国の格差問題だと実感させられます。
ジャ:2人の出発点は同じです。友人で同郷、一緒に遊び、笑っていた。しかし、改革開放政策の結果、貧しい人はさらに貧しくなり、豊かになる人は想像を絶する富を手にし、中国社会には巨大な分裂と激烈な対立が生じました。
■撮影/五十嵐美弥
●ジャ・ジャンクー/1970年、中国山西省生まれ。北京電影学院の卒業制作で、出演者すべて素人の『一瞬の夢』が1998年のベルリン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞。以降、『プラットホーム』『青の稲妻』『長江哀歌』などで国際映画祭を席巻。前作は中国で起きた4つの暴力事件を描いた『罪の手ざわり』。
※SAPIO2016年6月号