2016年度薬価制度改革により、年間販売額が非常に大きい薬に関しては、薬価を引き下げる「特例拡大再算定」も設けられた。年間販売額が1000億~1500億円で予想の1.5倍以上売れたものは薬価を最大25%引き下げ、年間販売額1500億円超で予想の1.3倍以上売れた場合は薬価を最大50%引き下げる。これにより、3か月で500万円かかっていたC型肝炎治療薬が3割下がった。しかし、これだけでは足りない。
なぜ、こんなに高額なのか。もともとオプジーボは、悪性黒色腫の治療薬として認可された。悪性黒色腫は日本人には比較的少ないがんで、患者数が限られている。
患者の数と、開発にかかわった研究費や薬の製造費などを考えて、薬価が高くなった。ここまではしかたがないことだったと思う。
その後、患者数の多い肺がんに適応承認され、将来的にはほかのがんにも承認されていく可能性もある。今のままの高額な価格設定で、多くの患者さんに使われるようになると、日本の医療費は膨れ上がり、医療保険制度そのものが破綻しかねない。
医療は、経済的な格差を乗り越えて、多くの人が平等に受けられるべきものだ。理想かもしれない。だが、決して忘れてはならない理想である。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。
※週刊ポスト2016年6月10日号